なんとこのアガリ一撃で2着目に。
柴田はこの局さえ流すことができれば勝ち上がりとなる。
運命のオーラス。
3巡目にをポンし、カン待ちのテンパイを入れる。
さらに柴田にとって超絶有利なのが、上家の松ヶ瀬がアシストにきてくれる点である。
ここで勝ちを意識したのか、柴田の手が大きく震えだす。
モニター越しに伝わってくる。
柴田の震える手から
柴田から漏れる吐息から
柴田の紅潮する顔から
柴田の中で脈打つ鼓動が
そして柴田の勝ちたいという欲が。
松ヶ瀬が中張牌を並べ出す。
岡田と滝沢にとっては絶望的な状況である。
(私はこれを地獄のセレナーデと呼んでいる)
だが、はなかなか顔を見せない。
そうこうしていると
をツモってカンにも受けられるようになった。
をツモ切ってのカンよりも、を手出ししてのの方が打たれやすいだろう。
やをポンしてのも捨てがたいが、柴田はを切ってカンに受けた。
すぐに
をツモって待ちに。
松ヶ瀬(上家)の捨て牌を見てほしい。これみよがしにアシストにきていることが分かる。
そして今待ちになったは先に打たれてしまっている上
これまで心の底から待ち望んでいたが打たれる。
なんという運命のいたずらだろうか。
手をこまねいているうちに
滝沢にテンパイが入る。
厳しいと思っていたら一撃で近づき、手にしたと思ったら離れていく。
麻雀はいつもそうだったよな。
滝沢が一瞬の隙を突く電光石火のアガリをものにし、眼前で勝ち上がりの切符をかっさらわれてしまったのだ。
いつの間にか柴田に感情移入していた私は、麻雀の無情さに打ちひしがれていた。
Mトーナメントは素晴らしい。
まだMリーガーに選ばれていない者…光の当たらない者たちの、熱い魂をぶつける様をみることができる。
柴田の欲を殺したダマテンと、欲が溢れ出てしまったオーラスに、本当に勝ちたかったんだという気持ちを垣間見たE卓だったのだ。
総合結果
1 松ヶ瀬隆弥 +65.4
2 滝沢和典 -0.4
3 HIRO柴田 -9.3
4 岡田紗佳 -55.7
麻雀ブロガー。フリー雀荘メンバー、麻雀プロを経て、ネット麻雀天鳳の人気プレーヤーに。著書に「ゼロ秒思考の麻雀」。現在「近代麻雀」で戦術特集記事を連載中。note「ZEROが麻雀人生をかけて取り組む定期マガジン」、YouTubeチャンネル「ZERO麻雀ch」