そうさ迷わず【Mリーグ2023-24観戦記 10/24】担当記者 越野智紀

こういう数字を見てフォームが崩れているのではと不安にもなりますが、データの利用は奥が深く表面だけでは判断できないもの。
黒沢選手は後手を踏んだ時に軽くかわしたり形式テンパイで粘り込むよりも、降りるか高い手を作って相手にぶつけていく傾向が強い打ち手です。

こういった形から【8ソウ】をポンして苦しい満貫のテンパイは取らず、【3マン】【2ソウ】【8ソウ】からターツを作ってメンゼンでの勝負を狙います。

先手を取られることが多いと鳴かずに終わる局も増えていく黒沢選手。
ここまで打ってきた56局で先制リーチをかけた回数が6回・受けた回数が35回と、後手の勝負が続いていたことで副露率は自然と下がっていきました。

さらに鳴きが少ない黒沢選手でも思わずポンチーと声を出してしまうような手牌があまり来ていないという不運も重なり、例年と鳴き判断を変えずに1.79%という何の数字かわからない記録が出てしまっていたのです。

勝敗は兵家の常とも言います。
鳴いて戦える手とメンゼンで先手が取れる手が少なく、ここまでの黒沢選手はただ武運に恵まれていない状態。

レギュラーシーズンも序盤なので深く考えすぎずに気楽に打てばいいのにと周囲の人間は思いますが、当の本人はそんな簡単には切り替えられないものなのかもしれません。

どこにでもあるちょっとしたツキの偏りに迷いが出たか、普段は残すような【6ピン】を切ってしまったという黒沢選手。
数局前に多井選手に放銃した、手牌に残してしまった【9ピン】【1マン】のことが記憶の浅い部分から出てきた影響もありそうです。
実際に【6ピン】先切りがダメかと言えば、決してそんなこともなく

園田選手の手は【赤5ピン】くっつきのイーシャンテンと、タイミング良く【6ピン】を逃がすことには成功しています。
そもそも岡田選手の仕掛けに【6ピン】が現物で【2ピン】が無筋というのもあります。
さらに【5ピン】の受けを消したカン【3ピン】固定は盲点になりえるので、【白】切りテンパイでカン【3ピン】待ちが残れば多少アガリやすくなるなどの利点もありました。

首尾よく【6ソウ】が引けた黒沢選手はダマテンを選択。
これも「普段なら100%リーチ」と終わった後に話していたので、調子が今一つ上がっていないことを自身では感じていたのかもしれません。

一方でここまで黒沢選手と同じくノートップながらもオール2着の成績で全く慌てた様子を見せていない多井選手。

終盤で【2マン】【5マン】の役無しテンパイが入り少考。
【4ソウ】を切ってリーチを打つか、ダマにするかの選択かと見ていると
【2マン】【5マン】も山に残っているかどうか怪しいし、黒沢選手のダマテン【4ソウ】が危ない。通ったとしても、ツモ切り追っかけリーチを誘発しそうなのでリーチは絶対に打てませんな」

と、テンパイ取らずの【南】切り。
これは岡田選手というよりも黒沢選手を警戒しての選択で、点数が無い状況でも満貫級の手をダマテンにすることがある打ち手だと黒沢選手を研究して理解していました。

すぐにドラの【8ピン】を掴み「無駄なリスク負わなくて良かったでしょ」と笑みを浮かべる多井選手。
抜群の安定感で岡田選手への放銃を回避しました。

もつれた勝負は最後のツモ番で黒沢選手がハネマンをアガリ、次局の親番に繋ぎました。

最後の親番でハネマンを被り、個人4連勝チャレンジの難易度が一気に上昇したのは園田選手。

自身の手牌を凝視して、逆転トップへの道を模索します。

この手牌から早さも高さも見つけることのできなかった園田選手は、【7ソウ】【6マン】と危険牌を先切り。
「諦める」という言葉が一番似合わない男の見せた怪しい切り出しに、これは何かが始まったことを予感させました。

そして【2ソウ】をリャンメンチー。
どんな劣悪環境でもターツがある限り副露率が30%を割ることはないなと思わせる、ワールドクラスなゴミ仕掛けが飛び出しました。
もしも岡田選手か多井選手のアガリで局が進めば、トップ逆転の条件は相当厳しくなってしまいます。
安く連荘してもらうか上位陣が親に放銃するのがベストだと考えた園田選手は、前巡と前々巡に【7ソウ】【6マン】と切っていき黒沢選手へアシストを開始しました。
この第一作戦は不発に終わったので、唯一のリャンメンターツをブラフに使用して早さと高さを演出する第二作戦に移行。
点数状況的に満貫以上のアガリが欲しそうに見える園田賢のリャンメンチー。
岡田選手と多井選手にプレッシャーをかけて足止めし、黒沢選手の連荘を助ける作戦を遂行しました。

こんな面白い作戦を選択した園田選手でしたが、誤算が二つ。

一つは【2ソウ】の直前にドラの【8マン】が岡田選手から打たれてしまい、リャンメンチーの生み出す幻想の威力が半減してしまったこと。

もう一つは既にポンテン取らずの黒沢選手に安手で連荘する気なんてサラサラ無かったことです。

親の黒沢選手から場に2枚目となるドラの【8マン】が打たれ、岡田選手からは【3マン】
園田選手の仕掛けがドラ暗刻やタンヤオ三色ドラ赤といった満貫の可能性が急に薄くなり

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