強気の、さらに半歩先へ__
高宮まりはこれまでも、
そうやって勝ってきた
【A卓】担当記者:江崎しんのすけ 2023年12月9日(土)
麻雀は地域やコミュニティによって様々なルールがある。
今、麻雀を始めた方はMリーグルールで遊ぶことが多いかもしれないが、巷の雀荘ではそれぞれのハウスルールが存在し、様々なルールに対応できるかどうかも、麻雀の実力のうちと言える。
様々なルールがある中で、麻雀最強戦は決勝戦以外、1回戦勝負で1着・2着が勝ち上がりという、普段見かけることの無い非常に珍しいルールだ。
この1年間の集大成となるファイナル初日。
集うは、予選を勝ちあがった15名と、現最強位瀬戸熊直樹。
超短期決戦ゆえ、与えられるチャンスは平等ではない。
ときには麻雀の理不尽さを凝縮したような出来事も起こる舞台。
しかしだからこそ、その舞台に対する選手たちの姿勢に心を打たれることが多々ある。
ファイナル1st stage A卓
東家 高宮まり (日本プロ麻雀連盟)
南家 内川幸太郎 (日本プロ麻雀連盟)
西家 園田賢 (最高位戦日本プロ麻雀協会)
北家 松嶋桃 (日本プロ麻雀協会)
南1局、高宮が勝負の親番を迎えていた。
東場は高打点を決めた内川・松嶋がリードし、高宮・園田が追いかける展開となる。
勝負の親番となった高宮は、0本場で2,000オールをツモり、2着の松嶋を逆転するまであと僅かなところまで迫っていた。
続く1本場、全員が有効牌を引けない中、ラス目の園田が終盤にテンパイを入れる。
打点を少しでも上げるために、リャンメンではなく・のシャンポン待ちでリーチをかけた。親番が残っているとはいえ、少しでも加点して逆転条件を軽くしておきたいところ。
同巡、イーシャンテンだった高宮が引いたのは筋のだった。
園田にはが通っていて、3巡目にを切っている。
は4枚場に出ているので園田の待ちがカンであることはない。
は高宮からは2枚しか見えていないのでシャンポン・単騎待ちの可能性はある。
ただシャンポン待ちの場合、3巡目にを切っているのでかなり序盤でから形を決めていたことになりやや不自然だ。
七対子などの単騎待ちだったとすると、よりも2巡前にツモ切っている2枚切れのを手に残していないのでこれもおかしい。
長々と理由を書いたが、要するにほぼ通る牌と言えるだろう。
通常の麻雀、例えばこれがMリーグで遭遇した局面なら、時間をかけずともツモ切れそうな牌。
しかしこの舞台、最強戦においては別の選択肢が出てくる。
点数状況をもう一度整理してみる。
現状、高宮は28,400点持ちの3着。
通過のためには松嶋・内川を逆転する必要がある。
通常の麻雀であればトップの内川まで9,600点差なので、この親番ではぜひとも加点したいところだ。しかし今回のルールでは1着と2着の価値に差は無い。
そして目下ライバルの松嶋とは1,500点差とほぼ並んでいるため、高宮は親番に固執しなくとも逆転できる可能性は充分にある。
もちろん、ここでトップ目の内川を逆転しておくことにもメリットはあって、終盤3着目に追い上げられたとしてもトップ目にいれば2着で残ることができるため、安全にゲームを進行することができる。
しかし、最も危惧しなければいけないのはラス目園田への放銃だ。
高宮と園田の点差は24,700点差。
一見かなり離れているように見えるが、仮に高宮が園田へ満貫の1本場を放銃すると一気に16,600点縮まり8,100点差になる。
アガった園田の持ち点は12,000点になり、2着目の松嶋とは17,900点差。園田はまだ親番が残っているので、1回のアガリで勝ち上がりが射程圏内だ。
今は内川・松嶋・高宮で2席を狙う争いだが、放銃すると松嶋・高宮・園田で1席を狙う争いに変わり、その3人の中で高宮は唯一親番が残っていないことになる。
さらに、は通りそうだとしても高宮のツモ番はあと1回でテンパイするためには園田に通っていないかを通す必要がある。
は無筋でドラがなので当たるとドラが絡むことが多い。
は園田の第一打が6mなので筋になっているが、などドラが絡む愚形待ちは否定されていない。
どちらも当たるとドラが絡むため、放銃打点は満貫クラスを覚悟しなければならない。