目醒める二刀流の野獣 鈴木大介の進化が BEAST復活の未来を呼ぶ【Mリーグ2023-24観戦記 12/14】担当記者 #後藤哲冶

しかし大介にとって、一番嫌な所からリーチが飛んできてしまう。
2着目園田からの、6巡目リーチ。大介のトップに、暗雲が垂れ込める。

オリの選択肢が無いラス目の親番、小林が切った【8ソウ】に、大介の手が止まる。
通常、これは鳴かないのが定石だ。園田に跳満をツモられなければトップで、【5ピン】は園田に対して危険牌。
更に、この【8ソウ】をポンしてしまうと、絶対に向かってくるであろう小林に対しての安全牌も2枚消費してしまうこととなる。

時間にして、3秒ほど。そこには、確かに葛藤があった。
自分で決めに行く大介の麻雀なら、ポンして【5ピン】切りなのではないかという、葛藤。

大介は、ツモ山に手を伸ばした。全て勝負するだけが、勝ちへの道ではない。
己の麻雀と、チームに勝利をもたらしたいという葛藤の後に、大介は守る道を選んだのだ。

親の小林がリーチをかけて追いすがるも、園田のツモアガリ。
開かれた手は……リーチツモ、ドラ赤。2000、4000の、満貫だった。

最後の瞬間、大介が小さく、息を吐いた。
間違いなくそれは――安堵からくる、息遣いだった。

ラスになってしまったのは小林剛。先制の2000、4000をツモった後は不運な放銃が続き、4着。
しかし押しも押されぬパイレーツの船長小林剛ならば。ここから崩れるということは想像しにくい。チーム全員の調子が良い今、必ず小林も上がってきてくれるはずだ。

悲願のトップとなった、大介。
インタビューの最初の一言は、
「ホッとしました」
だった。

苦しいチーム状況、儘ならない個人成績。志願の連闘。
自分でも「ここ数年では一番キツイ精神状態での半荘でした」と語っている。

シーズン序盤のトップ時インタビューと比べても、違いがハッキリと伝わって来た。
当時は喜びが全面に出ていたが、今日は明らかに違った。それだけ、安堵の気持ちが強かったのだろう。

大介の麻雀は大味だ。それが魅力でもあり、強さでもあると思う。
しかし、オーラスのシーン、大介はあの8sをポンするか葛藤し……そしてスルーした。
自らのフォームか、チームの勝利か。

どちらが良い選択かは、ここでは論じない。
しかし、大介が自分の麻雀を見つめ直し、より高みを目指すこの姿勢は、とても素晴らしいものだと思う。

今宵、久しぶりのトップを獲得した鈴木大介
この凶暴な野獣の進化が、BEASTの今後を大きく左右するだろう。

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