包囲網を破るため、選ばれた新戦力【Mリーグ2022-23セミファイナル観戦記5/2】担当記者:越野智紀

包囲網を破るため、
選ばれた新戦力

文・越野智紀【火曜担当ライター】2023年5月2日

第2試合


東家:勝又健志EX風林火山
南家:鈴木優U-NEXT Pirates
西家:佐々木寿人KONAMI麻雀格闘倶楽部
北家:萩原聖人TEAM RAIDEN / 雷電)

一足先にセミファイナル最終戦を迎えた雷電とPirates。

一戦目の選手から受け取ったバトンの違いから、二つのチームに課された使命には大きな変化が生じ

雷電は最終日に出場する4チームの平均ポイント(二戦目開始前の段階では68.4ポイント)を越えながらPiratesより上位ならファイナル進出が確定するので、この試合はPiratesに52,900点差のトップラスを決めさせないことが最大の目標。

条件が少し厳しくなったPiratesは雷電との52,900点差のトップラス条件を目指すよりも、最終日に試合を残した中で一番ポイントの近い麻雀格闘倶楽部に狙いを変更。
4位に必要な条件を少しでも難しくして結果待ちをすることが現実的な目標となりました。

この試合でファイナル進出を確定させたい雷電と最終日の条件を楽にしたい麻雀格闘倶楽部だけでなく、昨シーズンセミファイナルで破れて万が一にもファイナル進出を逃せない風林火山からも厳しく対応されそうなPiratesは

二試合目に鈴木優選手を起用。
過去のPiratesでは勝敗を分ける大一番では必ずといっていいほど小林剛選手が起用されていたので、この采配には正直驚かされました。

緊張感が高まる試合で完璧な内容を出すことは難しく

「頭が真っ白になりかけた」と言った松ヶ瀬選手や

二軒リーチの現物の【北】を見落とした勝又選手(※諸説あります。詳細は後述)といった、普段の試合ではまず見られない現象が起きるものです。

緊張や不安は高すぎても低すぎてもダメで、良いパフォーマンスを出すためには適度な緊張感が必要です。

「ゾーンに入る」という言い方をよく耳にしますが、それはベストな緊張感から生まれる高パフォーマンス状態を指しています。

またIZOF(Individual Zone of Optimal Functioning)理論という、選手によって緊張感が高い方が実力を発揮しやすかったり緊張感が低くリラックスした状態で臨んだ方が良かったりと、最適に機能するゾーンに個人差があるということも言われていて、自分が安定して力を発揮出来る緊張感を理解してそれを維持することも技術の一つとされています。

細かい条件計算が必要な大一番なら麻雀サイボーグこと小林選手起用が最適解では?
と見ていましたが、優選手は東1局1本場

勝又選手のリーチを受けるもノータイムで【6ソウ】プッシュ。

寿人選手からもリーチがきて、二人に無筋の【8ピン】もワンチャンスならばと余裕のプッシュ。

生牌【南】は勝又選手が【4マン】とのシャンポン待ちだった時の片割れ候補で寿人選手がチートイツなら本命サイドだが、【西】【北】も通ってないのでまだまだプッシュ。

二人に無筋の【4ピン】を掴み、ここで遂に一時停止。

勝又選手に残った無筋が【3マン】【6マン】【5マン】【8マン】【4ピン】【7ピン】【4ソウ】【7ソウ】【5ソウ】【8ソウ】で、寿人選手に残った無筋が【4ピン】【7ピン】【6ソウ】【9ソウ】
両方に無筋の【4ピン】は相当切りづらい牌でしたが

完全な安全牌が無かったので気持ちを整えてからプッシュ。

これが戦闘民族の鬼押しです。

この試合のPiratesは全員から厳しくされることが想定されていたため、厳しいマークの中で冷静に細かい条件戦をやる小林選手よりも

強引にこじ開ける突破力が必要だと、この【4ピン】を押し通す為に優選手が選ばれていたのかもしれません。
こういった想定される試合展開に合わせて選手起用を変えることはチーム戦の醍醐味の一つで、今シーズンのPiratesは新しい武器を手に入れていました。

リーチに通る危険牌を掴むたび、応援している人の期待に応えてツモ切る優選手。
山に残ったアガリ牌の枚数は【3マン】【6マン】が4枚で【西】【7ピン】は1枚ずつと、歯を食いしばった有利な状態での勝負を継続していたいましたが

その海賊団の勇気に山は味方せず。

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