醍醐大が踏みしめる　その力強き足跡は　不死鳥が羽ばたく軌跡となる【Mリーグ2023-24観戦記 1/11】担当記者 #後藤哲冶

「リーチ」

普段より少しだけ、強く置かれたリーチ宣言牌のが、乾いた音をたてた。
――これはもらった。
そんな僅かばかりの興奮すら乗った、醍醐のリーチ宣言。

ツモってきたほぼ全ての牌が有効牌。配牌から見違えるほどに成長したこの完成形。
そしてこれは醍醐は知る由もないが、最終形となった待ちのは、山に……７枚。

「ツモ」

必然のように一発でツモってきたを、一度噛み締めるように握って。そして醍醐が、静かに置いた。
6000オール。
醍醐の進む先に確かに見えてきた、２度目の頂の景色。

南４局１本場

オーラス、この黒沢の親さえ終わればトップ、というこの局面で、醍醐は好配牌を入れていた。
役牌のがトイツで、他の形もとても良い。

日向から、待望のが出る。これを鳴けばイーシャンテンだ。

が、醍醐はこれをスルー。そしてを引き入れて、自身の形は盤石といえるまでのものになった。
雀頭が確定していないのにわざわざ発を鳴く必要はなく、チーでの三色や、メンゼンでのテンパイを入れる事を狙った形。
ともすれば、鳴かない方がアガリまでは近いと考えたのかもしれない。

引き入れたのは、。
これでリーチをせずともなら三色でアガれる形。
解説席も、これはダマになりそうという見解だったが。

「リーチ」
醍醐の、この日５度目のリーチ宣言が響いた。

まず、待ちのが悪くない。他から放たれる３ｍも逃したくない。
そして、日向と園田への放銃はＯＫトップから落ちる放銃はほとんど無いからだ。
問題は、黒沢からの追っかけだが、黒沢はが早い。を使えないケースも大いにある。
めくり合っても、十分に勝てると読んだ。

醍醐は、強く踏み込んだのだ。
それは、自分自身のため。
指名してくれた、監督のため。

そして、応援してくれている、ファンのため。

その、力強い醍醐の足跡は――

不死鳥が羽ばたく、軌跡となるのだ。

２位に、雷電の黒沢。
インタビューでは、南１局での放銃を悔やんでいたが、トップになってからもアガリを取りにいく黒沢の姿勢は、とても素晴らしい物だったと思う。
雷電も苦しい状況が続いているが、この黒沢の姿勢は、どこかで実を結ぶはずだ。

久しぶりのトップを獲得した、醍醐大。
インタビューの最初に「めちゃくちゃ嬉しいです」と答えたその表情は、その言葉の通りに、喜色満面だった。

今日は第１試合で出場した茅森が４着でポイントを減らしたものの、この醍醐の大きなトップでトータルはプラス。
素点としても、最後のアガリ、3000、6000は大きな加点だった。

まだチームポイントはマイナス。それでも。
麻雀にどこまでも真摯で、そして情熱的な醍醐大が、フェニックスを上へ上へと押し上げてくれるはずだ。

インタビューが終わる。
セガサミーフェニックスの、少し派手な決めポーズは――

……少し照れがあるくらいが、丁度良い。