困難は最高のスパイス 猿川真寿の目は まだ死んではいない【Mリーグ2023-24観戦記 1/16】担当記者 ZERO / 沖中祐也

役なしである。
だからこそリーチを打つ手が有力だ。

──不敵に笑ったように見えた。

猿川は

【6ピン】を切ってヤミテンに構えたのだ。

【2マン】【3マン】【4マン】【1ピン】【1ピン】【3ピン】【4ピン】【5ピン】【6ピン】【8ピン】【3ソウ】【4ソウ】【5ソウ】

この手牌、【1ピン】【2ピン】【4ピン】【5ピン】ツモによる待ち増加(【2ピン】【4ピン】【5ピン】に関してはピンフ付加)に加え、ツモ【5マン】による345の三色まである。

次に空切りできる牌を持ってきたら空切りリーチを打ってもいい。
【7ピン】を打たれたあとにツモ切りリーチなんかも面白そうだ。

果たして猿川は思い描いていたのであろうか。

誰も想定できなかった、この極上の

いたずらを。
【9ピン】をツモってのペン【7ピン】リーチ!

通常、【6ピン】【6ピン】と連打してのリーチに【7ピン】は99%以上通る。
読みの基本のような形で、アガリの偉いこの状況ならなおさらだ。

極上の手変わり。
極上のいたずら。

【7ピン】は山に2枚いた。
この手をアガりきればこの観戦記も完璧なものとなる。

私の手も汗でじっとりしてきたが、そこへ親の滝沢が立ちはだかったのだ。
猿川がいたずらを施す前の手牌。

【2ピン】【4ピン】の愚形を解消したい場面。
【4マン】をツモってマンズが4連形になった。
ただ【7ソウ】も567の三色の種である。

滝沢もMリーグの速度と打点のバランスに苦しんだ一人である。
手役にこだわりすぎて速度で負け、速度に特化すると返り討ちにあう。
そのバランスが常に難しい。

──ここで9巡目にリャンシャンテンに戻し、間に合うのか。

でも、やっぱりこの手はこうだ。
滝沢が噛みしめるように【4ピン】を打ってリャンシャンテンに戻すと

【3マン】をキャッチしてマンズが3面張になってイーシャンテンに復帰。

【8マン】をツモって猿川のリーチに追っかける。

王道VSいたずらの結末は

王道の勝利。

滝沢の手牌に収められている2枚の【7ピン】、さらに裏ドラ表示牌にめくれた【7ピン】を見て、猿川は何を思ったか。

三つ巴となった1本場は全員がテンパイを入れる中

本田が【赤5ソウ】をツモって素点回復のアガリで決着。
同じ【5ソウ】待ちだった猿川は

唇を噛み、悔しそうな表情を浮かべた。
前局に出したリーチ棒により猿川は2着。

あのリーチは仕方ないと割り切れていると思うが、その前の【9マン】暗槓からの放銃を悔やんでいるのだろう。

だが猿川は壁が高ければ高いほど燃える男だ。
この困難も最高のスパイスとして乗り越える日が来るだろう。

BEASTは、ここのところの3連勝、そしてこの日の大介との2着→2着で

絶望的だった状況から、ひょっとしたら届くのでは、というところまできた。
7位8位まではテールトゥノーズだが(言いたいだけ)カットラインの6位・風林火山までも350ポイント強と、38試合あることを考えたら現実的なポイント差だと言える。

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