瑠美が止めた。
これはたろうが2枚持っていて、喉から手が出る程欲しい牌だった。
たろうは配牌からドラ3があり、アガれば3着に浮上できる手だった。イーシャンテンから中々進まないでいたが、瑠美に発を止められたことでアガリ自体が苦しくなっていた。
瑠美、たろうのアガリが厳しくなった直後…
なんと密かに国士を狙っていた渋川にテンパイが入る!
が4枚場に切られている絶好の待ち。
その直後、小林もテンパイを入れる。
白が入って47m待ちの2,900点。
小林のは山に4枚、対して渋川のは山に1枚だけ残っていた。
枚数では小林が有利だが、打点・順位点を考えるとアガったときのリターンは渋川の方が圧倒的に高い。
もし渋川が国士を成就させれば、アガリ点の32,300点に加え、順位が3着からトップになるため▲10ptが+50ptになる。その差は60ptだ。
つまりアガれば+92.3pt相当のアガリになると言っていい。
逆に小林はアガってもトップは変わらないので単純に2.9pt増えるのみ。
万が一にでも国士に放銃してしまうと、素点32,300点に加え、順位はラスになり順位点は+50ptから▲30ptになる。実に112.3ptを失う可能性がある。
1試合目が終わった時点でのパイレーツとサクラナイツのポイント差は115.6ptなので、このめくり合いで戦況がひっくり返ることだってあり得るのだ。
そして、ベタオリしている瑠美から出ることはないが、ラス目でアガリを目指しているたろうからはどちらの当たり牌も出る可能性が充分にある。
次巡、たろうが引いたのはマンズだった。
引いてきたマンズを、たろうはツモ切る。
河に放たれたのはだった。
小林が2,900点のアガリを決め、渋川の国士を阻止する。
最後のはどこにあったのか。
あまりにも大きなめくり合いはパイレーツに軍配が上がり、今期初役満はまたしてもお預けとなった。
その後も軽快にアガリを決め、5本場まで連荘した小林は58,500点持ちの大トップで試合を終える。
最後の連荘では、小林に派手なアガリはなく2,000~3,000点のアガリをコツコツ積み重ねた。
ただ、低打点のアガリも決してバカにはできない。
小林がオーラスの連荘で稼いだポイントは19,900点。
ポイントで言えば約20ptなので、1着順アップする分のポイントを稼いだことになる。
1戦目の瑞原のラスを帳消しにして、更にポイントを上乗せするような大トップ。
パイレーツ2度目の優勝に向け、頼りになる男が復活したと感じたクルーも多かったのではないだろうか。
日本プロ麻雀連盟所属プロ。株式会社AllRuns代表取締役社長。業界を様々なやり方で盛り上げていくために日々奮闘中。Mリーグ観戦記ライター2年目。常に前のめりな執筆を心がけています(怒られない範囲で)。Twitterをフォローしてもらえると励みになります。
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