【麻雀小説】中央線アンダードッグ 第57話:ドラポン【長村大】




中央線アンダードッグ

長村大

 

 

第57話

 

東場の親が落ちたが、しかしここで手が入った。

 

 ドラ

 

5巡目でこのイーシャンテン、仕掛けても満貫だが、下家の親に動きが入った。次巡おれがツモ切ったのリャンメンでチー、打

 

いくつかのパターンが考えられる。

まずは単純にタンヤオのパターン。だがチーテンだとしても、リャンメン待ちではなさそうだ。それならば鳴かないでメンゼンテンパイ、リーチを狙うだろう。あるとすれば愚形テンパイ、もしくはまだノーテンであろう。

役牌バックも考えられる。場を見ると、残っているのがおれがトイツのとドラののみである。

一番怖いのがドラ暗刻のパターンで、この場合はいろいろな待ちが考えられる。

だがいずれにしろ、テンパイすればは勝負しようと思っていた。まだノーテンの可能性も十分ある、鳴かれたらそのとき考えるしかない。

心づもりを決めたちょうどそのとき、上家からが打たれた。

がっついてはいけない、一拍おいてポンがないことを確認し発声する。そして打。声がかからないことを祈る。

「ポン」

だが、やはり、というべきだろう、下家である。むしろロンの発声でなかったことを感謝すべきか。

鳴いて、打

? なにかおかしい。今一度下家の捨て牌を確認する。

 

 

まずのまたぎはない。と持っていたなら、おれが鳴いたをポンするのが自然だ。のノベタンもない。メンゼンでリャンメンふたつのイーシャンテンからチーで形テンを取る理由がないからだ。

のリャンメンターツを払っているので愚形もほぼないだろうし、後付けである以上のまたぎもないと考えるのが普通だ。あるとすればくらいだが、そもそもがどういう形から放たれたのか判然としなかった。

考えがまとまらなくてもツモ番は来る、安全牌ツモ切り。

下家、なにかをツモって打

トイツ落としである。

あ、と思った。謎はすべて解けた、だ。

 

おれはツイている。

 

すでにベタオリの構えのカジを過ぎ、漫画家の手番。ドラポンの捨て牌をじっと見つめる。

ノーヒントの捨て牌ではない、安全牌に窮することはなさそうだ。ということは、ドラがなくともある程度の手が入っているのだろう。

「リーチ」

漫画家が発声して、を横に曲げる。だが、リーチ棒は必要なかった。

 

   ドラ

 

そう、おれのは当たりだったのだ。

 

   ドラ

 

この形だが、漫画家のと同巡でアガれなかったのだ。そしてをツモって待ち変え。

もし次巡なにかと入れ替えれば、少なくともよりは良いと思っている待ちに変えたことが推測できる。だがこの瞬間だけは何待ちになっているか、まったくわからない。現物以外はなんでも当たる可能性がある、もちろん漫画家も同じ読みであったろう。

が当たるのは読めない。偶然プロのツモ山に置いてあった牌で、そこに意思はない。だが、これで漫画家は相当厳しい立場となった。

プロも難しい選択であったはずだ。をスルーすれば、山越しでカジや漫画家から出てくる可能性はあるし、同様に山深くや王牌に寝ている可能性もある。だが彼は迷うことなくポンの発声をかけた。正解はわからないが、少なくともアガリに繋がった。

とにかく、これでカジとプロの差が一気に縮まった。後方の漫画家ほどでないにせよ、おれも置いていかれる恰好となったが、カジとの点差は変わらない。並びに意味はないのだ。

次局、この親を軽い手で蹴った。ようやく初アガリ、ヤキトリを回避したところで再びカジの親となる。後半戦だ。

カジは東1局以来、影を潜めている。手が入っていないのもあるのだろうが、守るときはしっかりと守れるオールラウンダーでもある。とはいえこのまま守り切れるとは思っていないはずだ、親でもうひと稼ぎしたいのは間違いない。

逆に子方、特に漫画家とおれは、ここで叩かれると本当に届かなくなってしまう。場合によっては差し込みなどの選択肢も考えざるを得ないだろう。

 

いずれにせよ残り半周、これですべてが決まる。

山が上がり、カジがサイコロを振る。

良い目が出ろよ、と祈る。おれだけではない、全員の祈りだ、だが全員の祈りが届くことは決してない。

 

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