たたえた笑みの、奥底に
黒沢咲がトップへ
手を伸ばし続けた結果
文・後藤哲冶【木曜担当ライター】2024年3月14日
Mリーグレギュラーシーズンは、大詰めを迎えている。

残り試合は、今週で全チーム10試合を切る。
どんな展開が待っていようとも、10試合を終えれば、下位3チームの敗退が確定。
そんな中、一番の苦境に立たされているのが雷電だった。
瀬戸熊が一度大きなトップを獲得したものの、その後3連続の4着でそのポイントは瞬く間に消滅。

ボーダーの風林火山との直接対決の今日、1試合目の瀬戸熊が終盤で粘りを見せたものの、差は広がってしまった。
彼我の差はおよそ150pt。

もう一戦たりとも落とせない雷電は、強気のヴィーナス、黒沢咲が登板。
その姿には、いつものように。
黒沢が見せる、たおやかな笑みがあった、
3月14日 第2試合

東家 勝又健志 (EX風林火山)
南家 鈴木たろう(赤坂ドリブンズ)
西家 黒沢咲 (TEAM雷電)
北家 滝沢和典 (KONAMI麻雀格闘倶楽部)
東1局

黒沢に好配牌が入った。
役牌東がトイツ、ドラが2枚。
オタ風のもトイツなので、一気にホンイツに向かいたいところ。
ここはカンターツを払って、
の重なりも見て行く進行。

しかしそんな黒沢をよそに、驚きのツモを見せたのが、親番の勝又だった。
この悪くもないが、決して良くはなかった配牌が

僅か6巡でここまで仕上がった。
文句ナシのリャンメンリーチ。ツモれば6000オールからの大物手だ。

これを受けて困ったのが黒沢だった。
リーチ後に持ってきたマンズ2つは、勝又に通っていない。
切る牌の選択肢は3つ。
マンズを強く押す、、
。
ホンイツの打点を見るなら、を落とし、ピンフテンパイを目指すなら
。
より安全に、リャンメン2つのイーシャンテンに構えるなら、1枚切れている。

黒沢が選んだのは、だった。
実況解説席では少し弱気な選択で、黒沢らしくないとの声もあったが、そういった印象は全く受けなかった。
マンズ2つはいずれも勝又に通っておらず、に至ってはいわゆるダブル無スジの牌。
親リーチを相手にそのターツを切り飛ばしていくのは勇敢ではなく無謀だ。
東を切った場合、シャンポンに当たるケースが存在し、その時相手はダブ東なので放銃時の打点が高くなる。
ピンフの1翻のために、東の放銃抽選を受けるのは、得策とは言い難い。
そこで、安全に2枚消費しつつ、追い付いたらリーチをかけられる切りが一番優れているように見える。打点はそもそもドラが3枚あって十分だ。
もとより、黒沢はこうしたメンゼンでの押し返しが優れている選手。
むしろこの選択は良さが出た一打のように見えた。

狙い通り、を引き入れてリーチに辿り着く。
は、山に3枚。
リーチ対決の相手は、現在レギュラーシーズン突破を争う風林火山の勝又。
運命を大きく分ける、最初のめくり合いは――

黒沢が一発で制した!
僥倖の3000、6000。