ということは仲林も前にでる必要があり、直撃できるチャンスもある。
本来であれば勝又の現物中を残しながら進行したいが、アガリに向かう必要がある仲林は目一杯に構える。
どこかでアガる必要がある仲林だが、勝又がアガった後では逆に条件を押し付けられる可能性もあるため、できれば早い内に決着をつけたい。
8巡目、純チャン一盃口のイーシャンテンとなった勝又からドラが放たれる。
そして、優にもテンパイが入る。
現状一盃口のみの単騎待ち。
跳満が必要な優は当然このままリーチをかける訳にはいかない。
目指すのは二盃口。
平和かタンヤオをつけてツモれば跳満になる。
を引けばタンヤオがつくので待ちを自由に変えられるが、を引くと平和をつけるためにどのみち単騎にしなければならない。
であればいっそのことを切ってタンヤオ牌3つのイーシャンテンに取った方がいいのか…
非常に難しい局面だが、優の選択は単騎。
はどのみちドラ表示牌なため単騎としては弱い。
まずは条件をクリアするテンパイを優先させる。
その直後、仲林にもテンパイが入る。
が入れば絶好の役ありテンパイだったが、ツモったのは。
出アガるためにはリーチをかける必要がある。
普段から所作が美しい仲林の打牌に、珍しく力が入った。
カン待ちで即リーチをかける。
直前に1枚切られており待ちとしては心もとないが、勝負所と見て前に出る。
親の勝又がドラのを切っており、仲林の目から3枚見えている。そうなると条件がある優のアガリが難しく、勝又にアガられたとしてもそこまで痛手にはならないのではないかという読みだ。
ただ実際には勝又は満貫のイーシャンテン。
優には一手替わり跳満のテンパイが入っている。
仲林がリーチをかけたことで、優は満貫直撃というルートも見えてきた。
優の欲しい、勝又の欲しい、も山に残っており、一手進めば勝負は全く分からなかったが、終始強気な姿勢を貫き、数々の猛攻を防ぎ切った盾に、勝利の女神は微笑んだ。
仲林の次巡のツモは僥倖の。
リーチ一発ツモドラの満貫で、Mリーグスペシャルマッチを制し、本戦出場の権利を獲得した。
「ツイてました」と笑顔でインタビューに応える仲林。
反撃のきっかけになったのは南1局のホンイツ、の先切りからで、その後の展開は恵まれていた面もあっただろうが、元のきっかけを見つけ出し掴みとったのは仲林の腕に他ならない。
ファイナルが行われるのは今年の12月。
その頃にはMリーグ2024シーズンも開幕している。
Mリーグ屈指の実力者が最強戦ファイナルの舞台でどんな闘牌を見せてくれるのか、今から楽しみだ。
日本プロ麻雀連盟所属プロ。株式会社AllRuns代表取締役社長。業界を様々なやり方で盛り上げていくために日々奮闘中。Mリーグ観戦記ライター2年目。常に前のめりな執筆を心がけています(怒られない範囲で)。Twitterをフォローしてもらえると励みになります。
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