一発勝負の最強戦、
瑞原明奈の明暗を分けた『気合い』
【A卓】担当記者:東川亮 2024年5月20日(日)

麻雀最強戦2024「Mリーグスペシャルマッチ」。
2年前より始まった麻雀最強戦とMリーグのコラボ企画であり、対局会場や放送時の演出などは原則としてMリーグ仕様となっている。昨年からはMリーグレギュラーシーズンの上位8名が選出されるというレギュレーションになっており、今年のメンバーは以下のようになった。

Mリーグ史上初となる2度目の優勝を飾ったU-NEXT Piratesからは3名が出場、A卓では鈴木優・瑞原明奈というチームメート2名が激突することになった。残る2名も、史上初めて個人3賞をコンプリートした伊達朱里紗、歴代最高スコアをたたき出した鈴木たろうと、そうそうたるメンツである。とは言え優勝チームとして、決勝に残らなければ格好がつかない。

2人勝ち上がりの予選卓、その一枠は、伊達によって早々に確保された。

東1局は他3者に遅れて最後に待ちのテンパイを果たすが、すぐにツモってツモチートイツドラドラ、2000-4000のアガリを決める。このとき、優が
のテンパイをしていてお互いのアガリ牌は
1枚だけ、並びから他者から出たときは優に頭ハネされるため、このままアガるにはツモるしかなかった。道中の牌の残し方も丁寧だったが、これをすぐにアガりきれるあたりは、さすが「麻雀に愛されている」と称されるだけのことはある。


東3局には待ちの先制リーチをたろうから一発で仕留め、12000。たろうとしては自身が打点の見える1シャンテンの上に伊達の河が強く、一発でロン牌をつかんでしまったのが不運。

東3局2本場にはわずか3巡でタンヤオピンフドラドラのテンパイを入れると、ダマテンで再びたろうから打ち取って12000は12600。ドラをツモ切っていてある程度手が整っていそうとは言え、ここまで速度と打点が伴う手が入っているとは想定外だろう。

2人勝ち上がり、赤がなくてMリーグより打点が作りにくい最強戦ルールにおいて、6万点持ちはセーフティーリードと言える。伊達は優位な立場を生かして立ち回り、トップで通過を決めた。

伊達に2度の親満放銃となったたろうは大きく後退。必然、決勝卓進出争いは優と瑞原の対決という構図になる。そんな2人の命運を分けた1局が、伊達の連荘の挾間にあった。

伊達が最初の12000をアガった後の東3局1本場。優のリーチを受けている状態でドラドラ、6400のテンパイをしていた瑞原の手が変化。雀頭だったドラの
を引き入れ、
か
を切れば
三暗刻ドラ3のハネ満という大物手になった。
は優に対して現物、
はスジとは言え通ってはおらず、どちらも河には1枚見え。

瑞原は優の現物を切って
待ちに構えた。もちろんアガりたい手だが、万が一ここで優に放銃して伊達と2人で上に抜けられてしまうと、協力体制を築かれてその後の展開が難しくなりかねない。ドラが
でペン
待ちがあってもおかしくはないし、局も既に終盤。
単騎でもアガリが期待できないわけではないので、放銃リスクを負わずリターンを狙った格好だ。

しかし直後に優がをツモ切り、瑞原は明確にアガリを逃す結果に。この局は最終的に全員テンパイとなり、伊達が親番を維持。次局に2度目の12000を決めることになる。

もし瑞原が単騎に構えていたら、後の展開は大きく変わっていただろう。赤なしでダマテンハネ満の手が入るケースは赤ありよりもレアであり、めちゃくちゃアガりたい手ではあった。長期で戦うMリーグなら
切りが有力だったかもしれないが、最強戦では果たしてどうだったか。次局を迎え、珍しく天を仰いだ瑞原の様子が印象に残った。

瑞原にアガリが訪れないまま、局は南3局まで進む。親番の伊達は抜けたトップ目で序盤から中張牌をバラ切り、この局の連荘はあまり期待できなさそう。
そのような状況で、瑞原に上図のテンパイが入った。カン待ちにとればタンヤオ三色が確定して5200から、5pを切れば
待ちになり、
ならタンヤオピンフが両立、
でもそれぞれタンヤオとピンフがつく。

「リーチ」

瑞原は、カン待ちで牌を横に曲げた。優との点差は12900、リーチをしなければオーラスは追いかける状況になることが濃厚で、最後に自分がアガリをとれるとも限らない。そして場を見れば
が3枚見え
が2枚見えに対し、
は見えていない。見た目枚数では打点的価値が最も高い
が残っており、それであれば真っすぐリーチに行って最高打点を狙ったほうがいい、ということだ。ツモって一発か裏が絡めばハネ満になり、優を逆転してオーラスを迎えることができる。

リーチの時点で、山にはだけが残っていた。ある意味で正解を選んだ形だが、それがアガリにつながるとは限らないのが麻雀。チャンス手が実らず流局となり、

最後は瑞原から優への放銃で決着。パイレーツ対決は優に軍配が上がり、伊達と共に決勝へと勝ち進むこととなった。

負けた瑞原は時折笑顔も浮かべつつ、試合については「気合いが足りなかったかもしれない」と振り返った。一発勝負を勝ち抜くには、どこかで気合いのプッシュが必要。瑞原にとっては、そんなことを改めて実感した一戦になっただろうか。

最後は仲間に戻った優にエール。
「託したぞ!」
うーん、かわいい。
瑞原にそう言われたい麻雀ファンが視聴者の数だけいたとか、いないとか。