麻雀最強戦2019
サバイバルマッチ
チャンスの神の前髪を掴め!
ZERO、井出康平
それぞれの勝ち上がり方
【A卓】担当記者:東川亮 2019年12月8日(日)
「チャンスの神様には前髪しかない」
ということわざをご存じだろうか。「チャンスの神様」とはギリシャ神話に出てくる神「カイロス」のことで、彼には前髪しかなく、一説によればいでたちは全裸、体もヌルヌルしており、後ろから捕まえようとしても捕まえられないという。現代社会であれば紛れもなく変質者なのだが、そこは神話なので大目に見てもらいたい。
「チャンスの神様」を捕まえるのであれば、待ち構えて前髪を捉えるしかない。すなわち、来たるべきチャンスに備えて準備を怠らなかった者だけがチャンスをつかめる、ということを示唆しているのだ。
「麻雀最強戦2019 サバイバルマッチ」は、麻雀界でチャンスをつかもうと研鑽を積んできた者たちの前に現れた、神様のような舞台だ。しかし、その前髪をつかめるのは8人中たった一人。果たして、その前髪をつかむことができたのは。
「マッコウ侍」平賀聡彦。ときに常軌を逸しているとさえ思える押しっぷりで、数多くのドラマチックな対局を生んできた異端の雀士。
「飛騨の女麻雀修験者」高橋侑希。過去には最強戦ガール西日本を務め、女流プレミアトーナメントでは2度の優勝を果たすなど、麻雀最強戦との縁は非常に深い。
「ゼロ秒思考」ZERO。名古屋を拠点に活動するアマチュアの雄で、「キンマWeb」でもMリーグ観戦記者として人気を博している。同じMリーグ観戦記者として、彼の活躍は個人的に期待していた。
「麻雀かぶき者」井出康平。華のあるルックスと言動、そして打ち筋で、特に放送対局で強みを発揮してきた。
当記事では、この4人で争われた予選A卓の模様をお届けする。
東家:井出康平
南家:平賀聡彦
西家:ZERO
北家:高橋侑希
東1局。平賀が早速らしさを見せる。高橋の6巡目ペン待ちリーチに対し、何と待ちの追っかけリーチを敢行。確かにドラドラで高目をツモれば倍満という大物手だが、待ちのはドラ表示牌で目に見えて薄い。恐らく多くの人が引きに備えると思うが、こうしたリーチを躊躇なく打てるのが、平賀聡彦という男の強み・個性だ。
しかし、当然ながらリスキーな選択が裏目に出ることも多い。をカンして増えた新ドラは、なんと高橋に暗刻。そして終局間際にを掴み、高橋に8000点を放銃してしまった。
対局は進んで東3局、ここから親番のZEROが怒濤の猛攻を見せた。井出が序盤に、と鳴いて早々にホンイツの満貫テンパイを入れる中、7巡目カンテンパイ、愚形でリャンメン手変わりもある牌姿だが、ZEROは即リーチに踏み切った。2着まで勝ち上がりという条件戦において、親への放銃は敗退に直結しかねないという相手の心理を突く選択だ。
しかしこのリーチに対し、井出が、
押す。
これも押す。
ドラのすらたたき切る。
結果は流局だったが、ZEROの戦略と、井出の決意が見えた一局だった。
ZEROが平賀から2900は3200をアガって迎えた東3局2本場。ここでもZEROはカンで即リーチ。愚形でも積極的に即リーチを打つ判断に関して対局後のZEROに尋ねてみたところ、やはりこの舞台を意識していたそうで、
「相手もそうは来られないだろうし、山越さん(関東最強位・「麻雀勝ち確システム」著者:山越貴広)を参考に、ガンガンリーチをしていこうと思っていました」
と語ってくれた。
しかし、このリーチに対してマッコウから勝負をするのが、平賀という男である。
えっ・・・。
ポンから、無スジをまるで安パイかのようにプッシュプッシュ。
はっきり言って危険極まりない押しだが、何か根拠があったのか。ただ、こういう押しこそ平賀の真骨頂であり、視聴者もハラハラドキドキを楽しめるところだと思う。もちろん、井出や高橋もそう簡単には手を崩さない。
しかしZEROは山に生きていたをツモり、2600は2800オールを加点。まずは一歩抜け出すことに成功した。
次局、ZEROがこの形でテンパイ。ダマでもタンヤオ三暗刻で9600と高打点が見込める上、一手変わりで四暗刻テンパイだ。麻雀最強戦では、役満をアガると株式会社サイバーエージェントから10万円の役満賞が出る。ここはダマかと思いきや・・・。
ZEROの選択はリーチ!よりアガリやすい待ちでこの半荘のトップを決定づけようという狙いだ。