ルイスが選んだのは、リーチだった。
引きでの、三色変化を、待つ手もある。だが、そうしている間に先にを長尾に切られたりすると、本末転倒なのだ。
狙いは直撃のため今自分がツモってもダメ。なら、少しでもはやくリーチを打って、長尾からの直撃且つ、一発か裏ドラ1枚を狙う。
それは、あまりにも細い道。
しかし、この大怪盗が歩んできた軌跡には、もっと細い道が幾度もあった。
それは、初年度第3節、海底と裏ドラ表示牌に眠っていた、奇跡の倍満に始まり。
去年は、絶望的だと思われていたゼウスのセミファイナル通過条件を、ライバルからの三倍満直撃で現実的なラインにまで押し上げたり。
いくつものドラマを、彼女は作って来た。
神域リーグは、彼女無しでは語れない。そう思わせるほどに。
安全牌が無くなった長尾が、ならアガリを見た方が良いと判断して、イーシャンテンをキープするためにルイスの当たり牌であるを切った。
これでまずは、第一関門クリア。
「きた……! 裏は?! リーチタンヤオピンフ、ドラドラ、裏があれば来る!」
再度ルイスが、視聴者が、翻数を数える。
間違いない、裏ドラが1枚乗れば、逆転……!
か細く見えていた道は、今はハッキリと見えている。
彼女が今日、連投を志願してまで奪いに来たお宝……!
神域リーグ2024 第23試合。
苦しいチームを救うべく、連投に送り出してくれた監督の期待に応えるべく。
この日――またひとつ、ルイス・キャミ―が伝説を作ったのだった。