本日第1試合に出場する、ヘラクレスのルーキー、長尾景は「監督キラー」と呼ばれているらしい。
今まで3度監督陣を相手取って、その中で一度も、自分より上の着順を取らせていないというのは、なるほど確かに、監督キラーというその称号に相応しい成績。
だが、この神域リーグにおいて、元祖「監督キラー」は誰かと聞かれた時。
一番最初に思いつく選手が、この選手な方は多いのではないだろうか。
歌衣メイカ。
初年度に旋風を巻き起こした漢は、圧倒的不利ともいえる周り全員監督という凄まじい状況で、2度の2着を持ち帰っている。
2人監督が入っていても厳しい戦いは必至だが、3人ともなるとまさに四面楚歌。
そんな状況の中で2着をもぎ取るというのは並大抵のことではない。
そしてそれから1年以上の月日が流れ。
こうして新旧監督キラーの対決が実現。
神域リーグの先輩として、意地を、見せることができるか。
第8節 第1試合
東家 多井隆晴(チームアキレス)
南家 長尾景(チームヘラクレス)
西家 歌衣メイカ(チームアトラス)
北家 ルイス・キャミ―(チームグラディウス)
この試合先手を取ったのは、これまでの神域リーグでは散々キラーされる側が多かった多井だった。
雀頭のないイーシャンテンから、山にいそうなを残し、しっかりと重ねてのリーチ。
これを勝負手が入っていたルイスから捉えて、2900のアガリ。
尚、控室配信ではカンが入っていたのにも関わらず裏ドラが1枚も乗らなかったことに対して「乗せんかい!」と声があがっていたが。
続く東2局
「こりゃ無理だな!」
あっけらかんとそう言い放ったのは、南家に座る歌衣だった。
手牌を見ると、確かに苦しい。
重なったが頼みの綱だが、親の長尾に一打目に切られていて、既にもう残り1枚しかない。
最初はホンイツも見ながら進行していた歌衣だったが、ドラのも引いてきて話が変わる。
「チャンタ、三色、ドラ。3900(ザンク)悪くない」
歌衣はこの数年間学んできたことの内に、鳴く時のバランスというものがあった。
判断材料は、打点と速度と、手牌の安全度。
歌衣が上家の長尾から出たをチー。
これでイーシャンテン。が雀頭なのも良い。相手からのリーチを受けた時は、安全にオリることができる。
もチーできて、これでテンパイ。
配牌をもらった時、あれだけ絶望的だった手が――
1000、2000の中打点に化けた。
「良いね。俺好みの手だ」
今の歌衣メイカは、この手を「好み」だと言い切れる。
多井が東3局でも長尾から3900を奪取。
長尾もホンイツのテンパイが入っていただけに、このは止まらない。
しかしその長尾も、東4局にすぐに1000、2000をツモって点棒を回復。
戦線復帰して南場を迎える。
南1局
歌衣がチートイツの先制テンパイ。
良い単騎候補の待ちを探していると、丁度良い1枚切れのが手牌に舞い込んだ。
これでリーチに打って出る。
ルイスからの追っかけリーチも入り、自身もドラ3のイーシャンテンだった長尾の所に、この北が来てしまう。
これは当然、止まりようもない。