太がテンパイして考える。は安全牌。問題はリーチをかけるかどうか。役なしだが待ちは良くなく、のこりは1巡しかないためアガリ率が低い。僅差だがトップ目、かけない選択肢もあるが…
太はリーチを打った。
リターンは1巡しかないが放銃リスクも1巡しかないためしのぎ切れる可能性もかなりあり、それならば松ヶ瀬の現物で松ヶ瀬からはほぼ必ず打たれるを一発でしっかり捕えようという考え。あがれれば決定打になる。
それに、のリャンメンチーから役牌バックで発進する好手を見せ、テンパイした高宮を、
最終巡に降ろしてリードを広げるという可能性もある。今回は渋川も参戦する3軒リーチの様相を呈したためシンプルに降りたが、松ヶ瀬・太の2件リーチの場合は、
「松ヶ瀬1人なら押すけど太も来るならやめる」
牌があり、その牌で高宮を降ろせれば儲けもの。
…とはいうが、あと1巡しかない愚形待ち、しかもこのように渋川の参戦もありうる状況で、このカンでリーチを打てる心の強い人間がどれほどいるのだろうか。私は常におびえている。
この局は松ヶ瀬が一発ツモ。6000オールのアガリを手繰り寄せるが、
南2局1本場で太がツモ、タンヤオ、三色、赤2の3000-6000。
このリードを守り切り、自身3勝目となった。
「要所で手が入って、ラッキーなトップを取りこぼさなかった」と謙虚に語る太。
だが、この選手の麻雀を見ていると、ラッキーという言葉では片づけられない、そのような高い力を感じる。
「人間離れした人間」渡辺太。AIの麻雀が彼を超える、その特異点はまだまだ先だ。