受け入れる強さ
【A卓】担当記者:小林正和 2024年12月14日(土)
そこは深海の舞台。
柵に覆われた、光の届かない静寂の中で
かすかな波紋を起こすように息遣いを交わし
指先から放たれる一打一打がそれらを広げると
葛藤、執念、そして希望。
湧き上がった鏡水は、輝くように彼女達の心を映し出したのであった。
苦難に直面するアフロディーテ
A卓から唯一のMリーガーとしての顔を合わせ持つ選手が登場。
美と愛を象徴するアフロディーテ
───岡田紗佳である。
麻雀業界というフィールドを飛び越え、マルチに多彩な光を放つ彼女は、事前勝ち上がりアンケートでも過半数に迫る得票率を獲得。その美貌とカリスマ性でファンを魅了し、多くの期待を背負ってステージへ舞い降りた。
実は今シーズンのMリーグにおいて、岡田は6試合連続4着を記録する等、かつて経験した事のない程の不調の波に飲まれている。
“私はめげないよ!ずっと麻雀と生きていく!”
試合前のSNS上で秘めた想いを語ったその言葉は、支えてくれるサポーター、そして何より自分自身に宿る炎が消えないよう問い続けているかのようにも聞こえる。
しかし、ここでも神々の微笑みは岡田に向けられる事なく、悪魔のささやきが彼女の背後へと迫っていた。
東1局
をポンして2,000点テンパイ。
誰よりも早く一番乗りで先手を取るも、木崎と小宮の2軒リーチに挟まれる岡田。そして、直ぐに放銃牌を掴まされ撤退を余儀なくされていた。
また、次局の東2局では
下家のソウズ仕掛けに怯む事なく、形式テンパイながらドラのをポンして粘りこむ。しかし、終盤に危険牌を送り込まれ迂回へ。
まるでMリーグでの不調を再現しているかのような展開である。
ところが、その一連の局の中には岡田の譲れない意地のようなものが隠されていた。
それはオリの選択をする時の判断スピード。
ツモってから切るまでの所要時間がそれまでの動作とほぼ一緒であった。
同じ頭を下げるにしても、迷った素振りを出してしまうと相手に付け込まれ可能性が出てくる。それを防ぐ為に、最低限のやるべき事はやろうという強さを感じられずにはいられなかった。
今日の対局もギリギリまで攻め込み、最少失点に抑えた印象の岡田。そして結果こそ4着ではあったものの、最後まで笑顔を絶やす事は無かった。
“いい麻雀打っていれば、いつか結果河ついてくると信じて、メンタル保って打ち切るのみ! まだまだ強くなれる!”
ギリシャ神話において、アフロディーテは苦難に直面する度にその姿は更なる輝きを増したと伝えられている。
岡田の再び輝くその姿。
その日は直ぐそこまで訪れている事だろう。
推しに推されて──私、麻雀だけは自信あるんです──
麻雀最強戦に出場する対局者と言えば、タイトルホルダーやその年に活躍した選手がメインであった。
それが、ここ最近の傾向によると少しずつ変化が見られる。推薦制度だったり読者アンケートという新たなルートが設立されたりと。
木崎ゆう。
彼女もそのレールに乗って、勝ち上がって来た一人であった。
対局前のインタビューでは
“私、麻雀だけは自信あるんです。”
と語った彼女。
その言葉通りの片鱗が見られたのは東2局であった。
東1局に小宮へ不可避な12,000のハネマンを献上し、いきなり大きなビハインドを背負った木崎。
孤立の字牌が幾つか残るこの手格好からチーの動きを見せた。
試合後のコメントでは
「最初の大きな放銃を受け、普段より前に出る麻雀を打とうと。気持ち的には誰にも字牌何も切らせないぞって!最悪一人テンパイでも…。」