思わず息をのみ、舌なめずりする。
左腕は、条件を確認し最後の思考を1000点棒に詰め込んだ。
「リーチ」
一発ツモなら条件クリア。
それ以降は裏ドラ条件となる。
だが、寿人が宣言牌のをポンして一発が消えてしまう。
直後、寿人がツモ切ったのは…
だった!
条件を満たせないのでアガれない!
いや、それよりも寿人の鳴きがなければ、一発ツモだったのだ!
アガるのは寿人か?
近藤か?
激しいめくり合いが続く。
もうどうなるのか、感情が追いつかない。
そして近藤が大きく振りかぶったと思いきや…
静かにアガリ牌を引き寄せた!
裏ドラが乗れば最強位。
──1半荘で最強を決めようぜ。
誰がこんなことを言い出したのか。
裏ドラ1つで勝者が委ねられる。
ともすればあまりに無情であるのに、なぜこんなにドキドキするのだろう。
これは最強戦が用意した筋書きではない。
牌が意図的に積まれているわけではないのだ。
最強戦の凄いところは、麻雀の魅力に全振りしているところだ。
麻雀打ちに136枚の麻雀牌を用意すれば、勝手に素晴らしいドラマが生まれると一片も疑うことなく信じ切っている。
そうでなければ「1半荘で2人勝ち上がりないし1人勝ち上がり」というごくごくシンプルなシステムに行き着かない。
何十年も前から、最強戦は麻雀の持つ悪魔的な魅力を知っているのだ。
──ピンフ手で2つ裏ドラをめくって1つ以上乗る確率はざっくりと50%。
再冠か連覇か… 日本中の麻雀打ちが注目する。
乗らなかった。
「2000/4000」
淡々と申告する近藤。
1つ息をつく桑田。
麻雀の神様は、純粋無垢でちょっと体の大きな青年に味方した。
連覇達成の瞬間である。
こうして2024年の最強戦は幕を閉じた。
この世に麻雀があって良かったと心から思う。
なかったらなかったで違う趣味に没頭していたかもしれないが、ここまでの充実感や熱狂を感じることができたか怪しい。
麻雀があって本当に良かった。
最強戦があって本当に良かった。
最強戦は末端のプロだろうと一般の方だろうと誰でも挑戦できる。
ヤボな宣伝はしないが、私はどうしてもこの舞台に立ちたい。
俺は、麻雀のことを何も疑わず信じている最強戦が好きだ。
さぁみんなで桑田将軍を倒しに行こうぜ。
麻雀ブロガー。フリー雀荘メンバー、麻雀プロを経て、ネット麻雀天鳳の人気プレーヤーに。著書に「ゼロ秒思考の麻雀」。現在「近代麻雀」で戦術特集記事を連載中。note「ZEROが麻雀人生をかけて取り組む定期マガジン」、YouTubeチャンネル「ZERO麻雀ch」