イニシアティブの優位性─“やんちゃさ”を支えるのは未来を見据えた思考と仲間への想い─【Mリーグ2024-25観戦記 12/20 第2試合】担当記者 小林正和 松本吉弘 vs 本田朋広 vs 二階堂亜樹 vs 鈴木たろう

しかし、現実はその希望の光を飲み込む。

逆に亜樹へ7,700は8,000の放銃へ。苦しいチーム事情を抱える二人にとって、明暗の分かれる一局となっていた。

虚構の幻影──偽る──

第一試合目、リスタートという新たな気持ちで挑んだTEAM雷電の瀬戸熊だったが痛恨のラスを引いてしまう。

その悔しい想いを受け継ぎ、第ニ試合目を託されたのは

とにかくアガリに対して真っ直ぐな姿勢が特徴。
“やんちゃ”麻雀でお馴染みの本田朋広であった。

ところが、開局の東1局では“イニシアティブ”の象徴である先行リーチがまさかの空振りに終わると

迎えた最初の親番、東2局では“ドラなし”“役牌なし”“形悪し”という絶望的な配牌である。

正直言って役牌以外の何を切っても良さそうだが、本田はじっくりと目の前に佇む14牌を見つめると第一打目に【9マン】を選んだ。

何気ない初手ではあるが、これが後に効いてくる事に。

その後【9マン】【7マン】とツモ切りを挟むと、4巡目のツモ【東】の所で打【2マン】とペン【3マン】ターツ払いへ。

更に【西】をツモった所で、本田の手が止まった。


さて、皆さんは何を切る!?

そろそろ中盤に差し迫ってくる頃合い。遊び半分も兼ねてメンホン・七対子見据えたピンズ切りを選択する人も多いのではないだろうか。
だがしかし、本田は意外な1牌を選んだ。

なんと場に2枚切れの【中】
それは手役にも守備にも兼用できる本田にとっては価値ある牌である。

(一体、なぜ…。)

多くの雷電サポーターも見守る中、一抹の不安が過ぎる。
しかし、その意図の答え合わせはすぐにやって来る事に。

同巡、松本にテンパイが入ったシーン。【4ピン】切れば【3マン】【6マン】待ちである。
少し不服だが、赤牌もあるし素直にリーチと行くと思われた。

ところが、今度は松本の手が止まったのである。

その時の松本・視点から見た河の様子がこちら。

お分かり頂けるだろうか。
注目ポイントは本田の捨て牌にある。マンズをバラ切りの後、字牌という様相。本田はアガリに真っ直ぐに向かうタイプなので遊び局にしているようには見えない。

(何を狙っているのだろう。ホンイツなのか…。その場合、ピンズそれともソウズのどっちなのだろうか…。)

松本の頭の中に生まれくる“見えない幻影”

もちろん自身の更なる待ちの良さも視野に入れながらではあるが、松本は打【3マン】とし【4ピン】単騎の仮テンで様子見とした。
(もし本田がドラ色のピンズ進行の場合、この【4ピン】はネック牌になり得るかもしれない…。)

少なからず、打牌理由の一つにそれが含まれていただろう。

麻雀のアガリ率は良くても25%。つまり、4局に3局はアガれないのである。
本田はこの絶望的な配牌を、あたかもマンガン級のアガれる25%の局と化し、相手の打牌に制限を与えたのだ。これもある意味“イニシアティブ”な面白い側面。

この半荘、松本は今シーズンの成績を物語るかのような展開が続きラスを押し付けられてしまったが

もし【4ピン】切りリーチを敢行していると、本田の【南】ポンを誘発する事なく一発で【6マン】を引き寄せていた… 未来があったかもしれない…。

大の大人がその無機質な、そのほんの小さな樹脂製の1牌に心踊らされ

麻雀に風という概念があるならば、山に待ち牌が無くともアガリ牌が宇宙のような無限の可能性を秘めた河へと吸い込まれていく。

本田は苦しむチームメイトがいるからこそ

HONDAとなり、そしてチームを救ったのである。
引き受けた“ライデンティティ”というバトンを次の選手へと繋ぐ為に。

今度は瀬戸熊が輝く時。
その準備・舞台は今この瞬間、整ったのだ。

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