萩原だった。
絶好のペンを引き入れて高めイーペーコーのテンパイ。
リーチを放って場を制圧しにいく。
親の浅見も1枚切れのを重ねて臨戦態勢。
一方、バックでテンパイを入れていた白鳥。
リーチの一発目に無筋のは押したが、今度はドラまたぎの。
この牌を切るには手の値段が見合わなかったか?
ここはを落として場を譲る。
すると、その直後。
萩原の右手に踊るの姿。
眉ひとつ動かさずに河を見つめる白鳥。
その胸中やいかに。
あるいは決着がついていたかもしれない今局だったが、なおも物語は続いていく。
次巡、白鳥がツモ切ったを浅見が仕掛け、ホンイツのイーシャンテン。
しかし、浅見へも怪しげなプレゼントが届けられる。
通っていない筋の。
トップ目ということもあり、ここはを切ってローリング。
そして、次巡。
をツモってイーシャンテンへお帰りとなったが…
萩原が切ったに浅見は声をかけず。
「心の弱さが出ましたね。」
対局後にそう振り返った浅見。
を鳴いた場合にアガリがあったかどうかはともかく、少なくともフォームとしてテンパイを取るべきだったという。
浅見の言葉どおりテンパイを取っていれば、あるいはこのアガリはなかったかもしれない。
各プレイヤーによる様々な選択の末、萩原が最後のツモで力強く手繰り寄せたのは高めの。
裏ドラを1枚乗せて3,000-6,000。
浅見を親被りさせて一矢報いた萩原、浅見に肉薄する。
次に注目したいのは東4局2本場、ドラは。
萩原の6巡目。
ご覧のキレイなイーシャンテン。
萩原が高めのツモを引き続けるという印象があまりないということを、実況の日吉プロが何度も語っていた。
やはり、萩原の麻雀を長年見続けてきた人にはそういう印象があるのだろう。
もしかしたら20年以上も前になるのかもしれないが、私の師匠の土田浩翔プロがフジテレビで放送されている「THEわれめDEポン」に解説で出演した際、
「麻雀の神様って意地悪で、萩原のように麻雀に真剣に取り組んでいる打ち手には『腕を見せてみろ』と試練を投げかけるんですよね。だから、安めを引かされちゃうんだろうな。」
と解説していたことを、この局を眺めていてふと思い出した。
それはもちろん非科学的なことであり、今と変わらぬ土田浩翔特有のおもしろ(オカルト?)解説の域。
なんの根拠もないと言われてしまえばそれまでだろう。
しかし裏を返せば、他者に劣る牌勢を粘り強さで跳ね返していく萩原の強さに対する賛辞でもあって、この言葉は私の脳裏に深く刻まれている。
だから、萩原聖人という打ち手の麻雀を長く見つめてこられた方には、このツモの強烈さがお分かりいただけると思う。
日吉プロのイメージとは裏腹に、高めのをツモった萩原。
浅見とは微差のトップ争い。
ヤミテンで満貫を拾うことを良しとせず、ノータイムでリーチに踏み切る。
そして、試練は堀。