萩原のリーチに、今にも泣きそうなこの表情。
点数状況が、その厳しさを物語っている。
岡田は親被りでトップ陥落。放銃も出来ない。
かといって降りようにも手牌は7枚しかない。
押しても待ちは最大2枚しかないし、自分はバックだから萩原以外からのアガリは期待出来ない。
考え得る、最悪の状況。

…ドラの。
いや、ドラであることは、今はそれほど重要ではないのかもしれない。
サクラナイツにとっては、今や2着も3着もほぼ同じ。
大事なのは、どうやったらトップで帰れるのか。
この無筋を押すや押さざるや…。

岡田は撤退を選択した。
流局して、醍醐がテンパイしない可能性。
そして猪突猛進になる仲林が、萩原に放銃する可能性。
それに一縷の望みをかける。

その「隙」を虎視眈々と伺っていた人物こそ、手を壊さずに字牌を絞り続けていた醍醐大。
岡田がテンパイを崩したわずかな隙を見逃さず、を打ち抜いていく。

岡田はそのをポンして中膨れの
単騎。
現状の手ではアガリはほぼ見込めないが、仮にアガったらトップは手中に収めたようなものだ。
醍醐が押しているのが明白なため、自分もアガれる形を組んでおかないとかなり厳しく見える。

醍醐のプッシュは、カン
ツモ、役ありテンパイという最高の結果に。
これならは余裕で押すに足りる手だ。

そしてさらに、仲林もリーチで参戦。
はトップ、3900点のときは岡田と同着になるパターンがある。

3者に囲まれ地獄の様相だが、

この手牌では、何を引いても押すしかない。
引いてきた牌によっては、この瞬間が出て醍醐に放銃となる未来すらあったかもしれない。

を打った後、萩原の振りかぶられた手を祈るような表情で見つめる岡田。
ツモられは終わり。祈るしかない。

振りかぶられた牌は、抜けていく。

このを醍醐からアガり、試合は終了。
4人で作り上げた、至極の一局。

この苦しい苦しいトップが、岡田紗佳の今シーズン初トップ。
だが、萩原のアガリを見た直後の岡田の表情は、やってやった、ほっとしたとか、嬉しいとかの形容詞が使えるような状態ではなさそうだった。
極限状態、その緊張から解き放たれたことによる放心。
「終わった…」 そんな顔にも見える。

そして、浜松町が二度目の桜色に染まる頃、ついに自分のミッションクリアを実感する。

その目には、大粒の涙があった。
実はこのサクラナイツトップの裏には、今日で一足先にレギュラーシーズンが終わる雷電、萩原の姿があった。

「カンだとツモアガリ率が高く、カン
だとロンアガリ率が高いから、ツモって親被りで醍醐をトップにさせるより、ロンアガリで岡田のトップ率を上げたかった」
と語る。
これは、すでにセミファイナルを見据えている者の言葉。
雷電は今期、レギュラーシーズンを敗退するとチームメンバーの入れ替えを強制される背水の陣だった。
それが今期はレギュラーシーズン初のプラス終了、そしてセミファイナルをどのように突破するか、夢を膨らませられるステージまでたどり着いている。
インタビューではひときわ大きな声で感謝と今日の謝罪を口にした萩原。
セミファイナルの戦いも楽しみだ。