執念で繋げ桜のバトン、岡田紗佳涙の初トップ―全員で作り上げた、オーラスのドラマ【Mリーグ2024-25観戦記 3/25 第2試合】担当記者 #高倉拓馬

萩原のリーチに、今にも泣きそうなこの表情。
点数状況が、その厳しさを物語っている。
岡田は親被りでトップ陥落。放銃も出来ない。
かといって降りようにも手牌は7枚しかない。
押しても待ちは最大2枚しかないし、自分は【中】バックだから萩原以外からのアガリは期待出来ない。
考え得る、最悪の状況。

…ドラの【6ピン】
いや、ドラであることは、今はそれほど重要ではないのかもしれない。
サクラナイツにとっては、今や2着も3着もほぼ同じ。
大事なのは、どうやったらトップで帰れるのか。
この無筋を押すや押さざるや…。

岡田は撤退を選択した。
流局して、醍醐がテンパイしない可能性。
そして猪突猛進になる仲林が、萩原に放銃する可能性。
それに一縷の望みをかける。

その「隙」を虎視眈々と伺っていた人物こそ、手を壊さずに字牌を絞り続けていた醍醐大
岡田がテンパイを崩したわずかな隙を見逃さず、【中】を打ち抜いていく。

岡田はその【中】をポンして中膨れの【6ピン】単騎。
現状の手ではアガリはほぼ見込めないが、仮にアガったらトップは手中に収めたようなものだ。
醍醐が押しているのが明白なため、自分もアガれる形を組んでおかないとかなり厳しく見える。

醍醐の【中】プッシュは、カン【5ソウ】ツモ、役ありテンパイという最高の結果に。
これなら【3マン】は余裕で押すに足りる手だ。

そしてさらに、仲林もリーチで参戦。
【2ピン】はトップ、3900点のときは岡田と同着になるパターンがある。

3者に囲まれ地獄の様相だが、

この手牌では、何を引いても押すしかない。
引いてきた牌によっては、この瞬間【6ピン】が出て醍醐に放銃となる未来すらあったかもしれない。

【1ソウ】を打った後、萩原の振りかぶられた手を祈るような表情で見つめる岡田。
ツモられは終わり。祈るしかない。

振りかぶられた牌は、抜けていく。


その、直後のことであった。

この【8ソウ】を醍醐からアガり、試合は終了。
4人で作り上げた、至極の一局。

この苦しい苦しいトップが、岡田紗佳の今シーズン初トップ。
だが、萩原のアガリを見た直後の岡田の表情は、やってやった、ほっとしたとか、嬉しいとかの形容詞が使えるような状態ではなさそうだった。
極限状態、その緊張から解き放たれたことによる放心。
「終わった…」 そんな顔にも見える。

そして、浜松町が二度目の桜色に染まる頃、ついに自分のミッションクリアを実感する。

その目には、大粒の涙があった。

実はこのサクラナイツトップの裏には、今日で一足先にレギュラーシーズンが終わる雷電、萩原の姿があった。

「カン【6ソウ】だとツモアガリ率が高く、カン【8ソウ】だとロンアガリ率が高いから、ツモって親被りで醍醐をトップにさせるより、ロンアガリで岡田のトップ率を上げたかった」
と語る。
これは、すでにセミファイナルを見据えている者の言葉。
雷電は今期、レギュラーシーズンを敗退するとチームメンバーの入れ替えを強制される背水の陣だった。
それが今期はレギュラーシーズン初のプラス終了、そしてセミファイナルをどのように突破するか、夢を膨らませられるステージまでたどり着いている。
インタビューではひときわ大きな声で感謝と今日の謝罪を口にした萩原。
セミファイナルの戦いも楽しみだ。

  • この記事が気に入ったら
    フォローをお願いいたします!
    最新の麻雀・Mリーグ情報をお届けします!

  • \近代麻雀シリーズ 新刊情報/