乱戦を制した鈴木たろう ゼウスと暴君の明暗を分けた、たった一つの選択【Mリーグ2024-25セミファイナル観戦記 4/8 第1試合】担当記者 #東川亮

さらに次局はホンイツ【南】イーペーコーの12000は12300をたろうから直撃する。

わずか7巡、これにはたろうもぼうぜん。瀬戸熊の持ち点は、このアガリで6万点を超えた。

普通なら、ここで決着だ。

だが、やはりこの男は諦めない。そして、オーラスの親番、南4局がこの試合最大のターニングポイントになった。

たろうの配牌。ドラの【白】がトイツで、鳴ければ高打点のアガリが期待できる。

肝心の【白】は、1枚が瀬戸熊の手にあった。手が悪ければ最後まで絞り切る、という進行もあったかもしれないが、瀬戸熊の手は1巡目にして2シャンテンで、【中】を鳴ければすぐにでもアガれそう。そして、そのときには【白】が出ていく。

早々に伊達から鳴けて1シャンテン。この段階で【白】を切ったことを、試合後の瀬戸熊は悔いた。

テンパイまで留めるべきではなかったか、と。

たろうは当然のポン。これで役と打点が確保できた。形はまだ悪いが・・・。

瀬戸熊が切った【3マン】をたろうがチーして1シャンテン。瀬戸熊がテンパったときは【5ピン】が出る可能性が高く、それはたろうが鳴いてテンパイを取れる牌。二人の手牌が、たろうに都合よくかみ合っている。

瀬戸熊に合わせるように、たろうもテンパイ。瀬戸熊としてはスピードで押し切るはずだったが、たろうにぴったりとついてこられてしまった。ただ、それでも先にアガりきってしまえばよかった。待ちの枚数も、たろうが1枚に対して瀬戸熊が3枚と有利だったが・・・。

1枚あれば、勝機はある。この局を制したのはたろう、4000オールで瀬戸熊に迫ることに。1枚の牌の切り時が違えば、この局の結果も大きく違っただろう。「バタフライ・エフェクト」という言葉があるが、ちょっとした選択一つが大きな影響を及ぼすのも、また麻雀の面白さである。

このアガリで親番をつないだたろうは、流局を挟んだ南4局2本場にリーチツモドラドラの4000は4200オールで瀬戸熊を逆転。

そのまま逃げ切って、会場をドリブンズ・グリーンに染めた。

「瀬戸熊さんにビシッとこられて、瀬戸熊さんのファンは喜んでいるだろうけど、こっちも応援してくれる人がいっぱいいるから負けられないと思った」

試合後のたろうはそう言って笑った。

難しいところからでも勝ち筋を探るたろうの執念、その姿と結果を喜ぶファンも、きっとたくさんいたはずだ。

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