望んだのは戦況を変える跳満__ 松本吉弘が選んだ、究極の2択【Mリーグ2024-25セミファイナル観戦記 4/14 第2試合】担当記者 #江崎しんのすけ

松本にテンパイが入った。
普段打牌スピードが早い松本の、手が止まる。

【5ピン】【8ピン】【6マン】【7マン】のどちらかの待ちを選択することができる。

リーチ宣言時の長考は、待ちの選択があったという情報を他家に与えることになるため、本来なら無いに越したことはない。

松本がリーチ宣言時に長考することはかなり珍しいと思うが、それだけ優劣のつけ難い難しい選択だった。

【5ピン】【8ピン】待ちに取った場合、【8ピン】が1枚切れているので見た目枚数は残り5枚。
ただ端にかかっている【8ピン】が残り1枚で、真ん中の【5ピン】は当然他家に使われている可能性が高いため、山に何枚残っているか推測するのが難しい。

対して【6マン】【7マン】は2枚ずつ見えているので、見た目枚数は残り4枚と1枚少ない。しかし【5ピン】【8ピン】と比べて場況は悪くない。

たろうと伊達が序盤に【9マン】を切っているので、【7マン】は持っていなさそうに見える。

たろうに至ってはその後【7マン】をツモ切っているので、保持率はかなり低いと見て良い。

堂岐は序盤に【5マン】を切っているので、その周りの【6マン】は持っていなさそう。

さらに松本は【8マン】を3枚持っているので、堂岐が【7マン】【8マン】【9マン】を持っている可能性も下がり、堂岐は【7マン】も持っていない可能性が高い。

【5ピン】【8ピン】の方が枚数としては1枚多いが、場況は【6マン】【7マン】の方がはるかに良い。

当然松本も理解しているが、状況をややこしくしているのが点数状況だ。

このままリーチをしてツモると、満貫からスタートとなるが、点数状況的に満貫ツモと跳満ツモには大きく差がある。

満貫ツモの場合、点数はこうだ。

松本 :21,900点
伊達 :25,100点
たろう:27,000点
堂岐 :26,000点

全員が2万点台になり、松本にもトップの可能性が出てくるが、着順は4着のまま。これではオーラスもう1回アガらないと、トップはおろかラスも回避することができない。

しかし、跳満ツモの場合だとこうなる。

松本 :25,900点
伊達 :24,100点
たろう:25,000点
堂岐 :25,000点

超僅差だが、900点差で松本がトップ目に立つのだ。
もちろん超僅差なので、トップを取るためにはオーラスもアガる必要はあるが、満貫ツモの場合の条件よりもずっと軽い。

そして何より、オーラストップ目で迎えた場合、自身が放銃しなければ2着より下に落ちることが無いのが大きい。

ここで跳満をツモれば、この試合をプラスで終えられる可能性がグッと高まる。

リーチをかけるので、ツモって裏が乗れば跳満になるが、暗刻が2つあり裏ドラが乗りにくい形になっている。

【5ピン】【8ピン】待ちにすると、跳満ツモが確定する赤【赤5ピン】ツモがあるため、【6マン】【7マン】待ちより跳満の可能性が高いのだ。

場況の良い待ちを取るか、跳満効率をとるか。

松本の選択は【5ピン】【8ピン】待ちリーチだった。

【6マン】【7マン】は山に4枚残っており、【5ピン】【8ピン】はたったの1枚。しかし、その1枚が松本が喉から手が出る程欲しい赤【赤5ピン】だった。

直後、伊達が【6マン】をツモ切る。
【6マン】【7マン】待ちなら、ここで伊達から満貫を出アガっていた。

松本の表情が、苦悶に満ちる。

直後、松本が4枚目のドラの【8マン】を引きカン。

【5ピン】【8ピン】待ちリーチには、このパターンの跳満ルートもある。
もし【6マン】【7マン】待ちにしていたら、待ちが変わるため、この【8マン】はカンできず、ドラ3止まりになっていた。

新ドラは【3ソウ】。松本は1枚持っているので、ツモれば倍満が確定する。

しかし、軍配は伊達に挙がった。
カン【6ソウ】をツモり、2,000-4,000の加点となる。

勝負手が負け、松本は肩を落とす。

オーラスは松本が満貫をツモるも、4着のまま終局。

トップは伊達となった。

麻雀は抽選と選択のゲームであり、プレイヤーが介入できるのは選択の部分だけだとよく言われるが、シーズンが終盤になればなるほど、些細な抽選が想像を絶する残酷な結果を導くシーンが多くなってくる。

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