「ロン」

多井の手が、前に倒れる。

「12000」

アガリ形を見つめたあと、萩原は、

視線を落とし、点数を払った。
ちなみに、たろうは、

–
待ちテンパイをしていたところから、多井に危険な
を引いて、
のトイツ落としで回っていた。
萩原にとって、痛恨の放銃となった。
たしかに、この局は仕掛けが入り乱れていたうえ、

半荘単位で見ても、ここまでの展開でリーチや仕掛けが何度も空を切ったため、焦りがあったのかもしれない。
また、萩原はここまで4連続でラスを引いている。自ら扉をこじ開けることで、現状を打破したい気持ちもあったのだろう。
ただ、この12000の失点を萩原は取り返すことが出来ずに、

4着でこの試合を終えた。
雷電ユニバースにとっては、辛い1日となった。
1試合目では、

黒沢が「勘違い」と語る、テンパイ逃しがあった。
そして、2試合目では、萩原のリャンシャンテンからのチンイツ放銃を目の当たりにした。
感情移入して応援しているサポーターほど、心が悲鳴を上げていることだろう。
また、選手の精神状態を考えて、心配しているファンも多いように思う。
推しの気持ちを考えるほどに、
「自分も辛いけれど、選手はもっと辛い」
と、感情を、辛さを、共感してしまうこともあろう。
実際、萩原のインスタライブを見ていたが、悲痛な面持ちをしていた。
ただ、そうこうしている間にも、時は流れていく。
私は、小林剛が語る、この言葉が好きだ。

「ミスを見せるのもプロの仕事」
そう、プロといえども人間。
人間である限りはミスを0には出来ない。
だからこそ、「ミスをしたあとで、どう次に繋げていくか」という様を見せるのも、プロとしてとても大事な部分だと感じる。
そして何より、雷電ユニバースが見たいのは、気持ちを切り替えて戦う4人の姿だろう。
過去のことは反省し、未来のことを思い描く。
それが重要だと感じる。
よく見てみよう。
今、雷電はボーダー下の5位にいるとはいえ、

4位KONAMI麻雀格闘倶楽部とは、85.8ポイントの差しかないのだ。
まだ、6試合も残っている。そして、金曜日と月曜日は、雷電とKONAMIとの直接対決、4連戦が待っているのだ。
この日の「悔やまれる選択」が、最終日などではなく、まだ挽回の効くこの時点で起こって良かった、という考え方も出来るだろう。
また、これは本当にどうしようもないのだが、6チームのうち、必ず2チームはセミファイナルで脱落する。
雷電、KONAMI麻雀格闘倶楽部、どちらかはファイナル行きの切符を逃してしまうだろう。
そんな中で、もちろん自チームに勝って欲しいのは当然なのだが、敗退するにしても「納得のいく負け」を見たい気持ちも各チームのサポーターにはあるように思う。この日の雷電は「納得のいかない、気持ちのやり場がない負け」だったのではないだろうか。
TEAM雷電は、ここでスパッと切り替えて、アツい勝負を繰り広げるしかない。
今、この瞬間も、
「今日、雷電に勝ってほしいな」
と、真剣に祈っている、

全国の雷電ユニバースのために。
京大法学部卒の元塾講師。オンライン麻雀「天鳳」では全国ランキング1位。「雀魂」では4人打ち最高位の魂天に到達。最近は、YouTubeでの麻雀講義や実況プレイ、戦術note執筆、そして牌譜添削指導に力を入れている、麻雀界では知る人ぞ知る異才。「実戦でよく出る!読むだけで勝てる麻雀講義」の著者であり、元Mリーガー朝倉康心プロの実兄。x:@getawonarashite