アマチュア最強位、JOKERからの贈り物【麻雀最強戦2025 ファイナル2nd Stage】観戦記【B卓】文：中野巧

しかし、結果は眠れる将軍を完全に起こしてしまう。

をツモった桑田は裏ドラを2枚乗せ、ハネ満のアガリに。これで多喜田以外の3名が横並びになる。同い年の多喜田と桑田の選択が奇しくもかみ合ってしまう。

桑田はこの最強戦を2連覇しており、今回前人未到の三連覇がかかっているせいか、いつもより緊張していた。普段試合会場で会ったときは軽く会話したり、痩せていた頃の写真を見せてもらったりするのだが、今回ばかりは珍しくそわそわしている様子だった。
しかし、この局でいつもの桑田に戻った。いつものどんな相手でも、どんな手でも、最後の牌まで押し通す麻雀なのに、ここまでは滝沢やJOKERの手組に対して後手に回らされていた。
この時、「これ桑田くん勝つな」と控室で数名のスタッフさんたちと話していた。

 

南4局　オーラスの攻防　JOKERからの贈り物

オーラス。桑田はアガれば勝ち上がり、多喜田はハネ満のツモもしくは倍満の出アガリ条件、
親の滝沢はアガリやめがないため、若干苦しい。

誰も向かえない、親の滝沢からの3巡目リーチ。一度はシャンポン待ちでダマテンにするも、親からのリーチが早ければ早いほど周りは攻めにくいため、これ以上待てないと判断した。JOKERはもちろん、さすがの桑田もここではオリを選択する。

後がない多喜田が一発でツモれば逆転の手を仕上げ、追いかけリーチ。しかし、一発ではツモれず、滝沢のも山にないため流局かと思われたとき。

「チー」

JOKERが多喜田にハイテイをまわす仕掛けをする。JOKERの立場からは、滝沢のアガリが最も嫌で、多喜田がツモる分には良いのである。そのため、一発や＋１ハンを求めていそうで、アガらない選択もある多喜田にハイテイをまわし、アガってもらいこの局で終わる確率を少しでも上げたのである。まるでアマチュアとは思えない、強者かつよっぽど慣れていないとできないとっさの仕掛けである。

しかし多喜田はJOKERからの贈り物を受け取れず、結果は流局。勝負は次局持越しとなる。

 

南4局1本場　大激戦を勝ち抜いたのは

 

アガれば2位の桑田がタンヤオを目指して仕掛ける。と、そのスピードに負けじと滝沢もをポンする。形やドラなど関係なくアガリ合戦だ。

しかし、園田賢の遺伝子と若手の枠を背負った多喜田も負けじと、ツモれば逆転となる手が入りリーチに。

その後、桑田、滝沢もテンパイ。3者の戦いとなる。この瞬間、観ている人の全員が誰が勝つ負けるではなく、次の牌が何かを必死で目で追っていた。

滝沢がを引き、を切った。タンヤオ仕掛けの桑田に対してが危険であるのと、出アガリならハネ満が必要な多喜田の手を満貫までだと読み切り、滝沢からはロンアガリしないだろうと判断した一打だが、結果は皮肉にもすぐにが多喜田から切られる。

 

 

 

最強戦に愛された将軍がをツモり、Ｂ卓の勝ち上がりは桑田・JOKERの2名となった。

JOKERは打ち上げの席でハイテイずらしの局について5回以上話していたが、この場であの仕掛けができる打ち手はそういない。また、楽屋で森山茂和と相部屋だったため、いい緊張感を保ち続けられたのかもしれない。
桑田も東4局までパっとせず、ツモの連打で点数が削られていた時はだめかと思ったが、あそこから見事に差し返した。やはりこの男はこの舞台に愛され、最強戦に愛されている。