剛よく柔を断つ 〜鈴木大介13戦ぶりのトップ奪取【Mリーグ2025-26 レギュラーシーズン 観戦記 12/19 第1試合（麻雀チャンネル）】担当記者 千嶋辰治

大介はダメ押しとして、を空切り。
最終手出しをマンズにして、ピンズへのフォーカスをボヤけさせている。
「読んでくれる相手」に対しては効果的なテクニックなのだが、この局はがあまりにも目立ちすぎているため効果は限定的かもしれない。
それとて大介にとっては織り込み済みだが、直線的にツモ切りとしないあたり大介が冷静に打てていることがうかがえる。

待ちは残り4枚。
ドラが2枚、赤が2枚と安めは1枚しか残っていないが、

一番派手なを手繰り寄せて2,000-4,000のツモアガリ。
ちなみに、打のところで直線的に、あるいはを切っても同じ結果になっている可能性は高い。
しかし、大介が打てている日はこのように手順に「こうするんだ」という意志が乗っていることが多いと私は思う。
このアガリ、大介の起爆スイッチに手がかかったような感触を覚えたのは私だけだろうか？

 

・大介の真骨頂、「剛よく柔を断つ」

「柔よく剛を制す」という言葉は柔道から来ているように思われる方は多いだろうが、実はその由来はさらに古くて中国の「三略」という兵法書にある「柔能制剛、弱能制弱」という言葉が由来だという。
また、「柔よく剛を制す」には「剛よく柔を断つ」という続きがあることもあまり知られていないだろう。
時と場合により、「柔」と「剛」をうまく使い分けることが肝要。
兵法にはそう記されている。

東3局。

先ほどと雰囲気がそっくりな大介の配牌。
今度はこれをどう料理していくのか？

すぐにが暗刻になった大介。高打点への期待が募る。

大介はマンズが伸びたところで三元牌に見切りをつけたが、手がよく育ったのは大介だけではなかった。

目下好調をキープしている永井から先制リーチの火の手が上がると、

醍醐が超弩級の高打点リーチで追っかけた。

リーチに挟まれた大介だったが、

終盤までに永井のロン牌であるを吸収しまくってテンパイに漕ぎ着けると、

柔らかに、そして軽やかに二人を抜き去ってツモアガリ。
2局連続の満貫ツモで大きなリードを築いた。

そして圧巻だったのが、東4局1本場。

前局に醍醐から12,000のアガリで気炎を吐く永井がダブ暗刻の手を即リーチ。
河にはが3枚並べられており、ヒントが少なすぎて立ち向かいにくい。
同巡の大介。

ご覧のように手の内がパンパンの状況。
現物のを抜いたとて、その後が続かない。

珍しく長考に沈む大介だったが、逡巡したというよりは心を整えるのに時間を使ったかもしれない。
なぜなら、

手をかけたのはドラの！
河にが2枚切れていて宣言牌のスジ。
比較的通りやすいといえるが、当たった時は単騎やシャンポンである可能性も高い。
自身でも「当たったら18,000からかも？」と述べていたように、万が一の際のダメージが計り知れない。

しかし、ここは大介が持ち味の「剛」を示す場面となった。

次巡、さらには無筋のもぶっ放して喧嘩上等。
そして、

永井の現物待ちである待ちのテンパイとなったため、ここはヤミテンに構えた。
しかし、無筋を切り続けている大介は相当な存在感。
親に対抗できる手を有しているとなれば、おいそれとはこぼれてこないだろう。

ならば。