「うおぉぉっつつ! ノーミスなんだけど!!」
まさに「ゼウスの選択」。
実況席も大興奮の4,000オール。萩原を射程圏に捉えるのだった。
そして、年内最終戦もいよいよ最終局へと続いていく。
迎えた南4局、点数状況は以下の通りとなっていた。
トップ争いと3着争いの構図がもたらすもの。それは…
風神・内川が仕掛けると
雷神・萩原も、それに続く。
鬼神・下石までもが鳴いて、オーラスを終わらせにかかる。
対するゼウス・たろう。
トップにはマンツモ条件である。
つまり、ここで必要なのは、逃げ道ではなく、勝ち筋だ。
今季16戦、トップなし。
届きそうで届かなかった。間に合いそうで間に合わなかった。
今夜も東場では「すれ違い」に何度も刺され、東4局1本場ではドラ
を掴んで8,300の失点。
「(初トップは)来年かなって。」そう口にしたくなる夜だった。
それでも──。
【ゼウス(Zeus)】
宇宙と天空を司り、雲を呼び、雨や雪を降らせ、雷を落とす。気象を支配する天空神である。
たろうは、まだ諦めていなかった。
卓上には暴風と雷雨、そして破壊の神が連鎖し空気が張りつめる。
ここで求められるのは、まさに「天空神・ゼウスの選択」だ!
ここから導き出したのは
間に合わせるための一打ではない。
支配するための一打である。
イーシャンテンに取らない、その一手は
ツモアガリ2,000・4,000。
逆転トップ。
をツモった、その瞬間は。
久しぶりに気持ちのいい感触の一言であった──。
今季16戦、届かなかった「箱(Box)」が、年内最終戦のオーラスでようやく届いた。
一日遅れのクリスマス・プレゼントは、待っていたら来なかっただろう。ゼウスが、たろうが自らの力で届けにいったのである。
レポーター・川上レイ
「あの時の
と
の選択について、どういう思考だったのか、教えてください。」
たろうは少しだけ照れくさそうに笑って、こう明かした。

「
が2枚切れていたので…。もし
ロンになった時、裏ドラ表示牌に
がこなさそうな
。つまり裏ドラが乗りにくい方を選びました。弱気な気持ちでしたよ(笑)。」
あの時、神の采配ではなかったかもしれない。
放銃する未来を、先に怖がった選択だった。
時には、たろうも人間なんだなって。
だからこそ、このトップはあたたかくサポーターへ届く。
強さだけじゃなく、弱さごと抱えた人間に届く。
一日遅れのクリスマスプレゼントは悲劇から喜劇へと。
そして来年。
チームも、そしてたろう自身も、ここから巻き返すだろう。
たろう
「みなさん! 良いお年を!!」
















