年内最後のBoxing Day──鈴木たろう、悲劇から喜劇へ──【Mリーグ2025-26 レギュラーシーズン 観戦記 12/26 第2試合(麻雀チャンネル)】担当記者 小林正和

「うおぉぉっつつ! ノーミスなんだけど!!」

まさに「ゼウスの選択」。

実況席も大興奮の4,000オール。萩原を射程圏に捉えるのだった。

そして、年内最終戦もいよいよ最終局へと続いていく。
迎えた南4局、点数状況は以下の通りとなっていた。

トップ争いと3着争いの構図がもたらすもの。それは…

風神・内川が仕掛けると

雷神・萩原も、それに続く。

鬼神・下石までもが鳴いて、オーラスを終わらせにかかる。

対するゼウス・たろう。

トップにはマンツモ条件である。
つまり、ここで必要なのは、逃げ道ではなく、勝ち筋だ。

今季16戦、トップなし。
届きそうで届かなかった。間に合いそうで間に合わなかった。

今夜も東場では「すれ違い」に何度も刺され、東4局1本場ではドラ【5マン】を掴んで8,300の失点。
「(初トップは)来年かなって。」そう口にしたくなる夜だった。
それでも──。

【ゼウス(Zeus)】
宇宙と天空を司り、雲を呼び、雨や雪を降らせ、雷を落とす。気象を支配する天空神である。

たろうは、まだ諦めていなかった。

卓上には暴風と雷雨、そして破壊の神が連鎖し空気が張りつめる。

ここで求められるのは、まさに「天空神・ゼウスの選択」だ!

ここから導き出したのは


【6マン】切り!

間に合わせるための一打ではない。
支配するための一打である。

イーシャンテンに取らない、その一手は


456の三色へと伸びていくと…

ツモアガリ2,000・4,000。
逆転トップ。

【5マン】をツモった、その瞬間は。
久しぶりに気持ちのいい感触の一言であった──。

今季16戦、届かなかった「箱(Box)」が、年内最終戦のオーラスでようやく届いた。

一日遅れのクリスマス・プレゼントは、待っていたら来なかっただろう。ゼウスが、たろうが自らの力で届けにいったのである。

レポーター・川上レイ
「あの時の【中】【發】の選択について、どういう思考だったのか、教えてください。」

たろうは少しだけ照れくさそうに笑って、こう明かした。


【白】が2枚切れていたので…。もし【發】ロンになった時、裏ドラ表示牌に【白】がこなさそうな【發】。つまり裏ドラが乗りにくい方を選びました。弱気な気持ちでしたよ(笑)。」

あの時、神の采配ではなかったかもしれない。
放銃する未来を、先に怖がった選択だった。

時には、たろうも人間なんだなって。

だからこそ、このトップはあたたかくサポーターへ届く。
強さだけじゃなく、弱さごと抱えた人間に届く。
一日遅れのクリスマスプレゼントは悲劇から喜劇へと。

そして来年。
チームも、そしてたろう自身も、ここから巻き返すだろう。

たろう
「みなさん! 良いお年を!!」

  • この記事が気に入ったら
    フォローをお願いいたします!
    最新の麻雀・Mリーグ情報をお届けします!

  • \近代麻雀シリーズ 新刊情報/