僕は… 石川遼は
こんな牌を打たない
理詰めの向こう側に見た
我慢と情熱
【決勝卓】担当記者:ZERO/沖中祐也 2022年6月19日(日)
この日のトーナメントは「理詰めの極致」と銘打たれた。
なるほど、理を追求するドリブンズの3人と歴代天鳳位たち5人が顔を揃えている。
麻雀は数字を扱うゲームなので、とどのつまり理が全てだ。
そこに気合や情熱などの要素は入るはずもない。
──はずもない、のだが。
B卓のオーラス4本場、
齋藤の猛攻に追い詰められた石川は、リーチに対してこのチーから発進。
いらない牌を荒々しく切り飛ばしていく石川は、いつもの温厚なイメージとはかけ離れていた。
石川の押し返しを肌で感じた齋藤のツモ切る指が震えている。
齋藤はこれまでの最強戦で結果が出せず、勝ちたい思いだけが募っていた。
バチン、バチン… 2人の切る牌が卓上に音を立てる。
(勝ちたい…)
(譲らないよ)
言葉にせずとも、熱い感情はモニター越しに伝わってくる。
理詰めの先には、何があるのだろうか。
決勝卓に残ったのは次の四人。
東家・山田独歩(3代目天鳳位)
南家・石川遼(4代目天鳳位)
西家・園田賢(赤坂ドリブンズ)
北家・鈴木たろう(赤坂ドリブンズ)
最初に抜け出したのはたろうだった。
粘る開局の親・独歩の親を8000で落とすと…
東3局にはリーチ・一発・ツモ・ピンフ・ドラ・裏という、この世で最も効率が良いとされている30006000をツモ。
たろうは予選のA卓オーラスで、解説の梶本をして「こんなの見たことがない!」という選択を見せてきた。
このアガリ牌のカンをチーしたのだ。
ロンしないことによって、安全にテンパイを維持したまま…
仕掛けている園田のアガリを待つことに成功。
底知れぬゼウスの選択が冴えに冴え渡ったのだ。
抜けたたろうに待ったをかけたのが、Mリーグではチームメイトとなる園田だった。
園田はここからを切った。
なんてことない選択だが、牌図を見てみよう。
下家のたろうの仕掛けがチャンタを匂わせている上、ドラのまで切り飛ばしている。
はチーもロンもされたくない牌だ。
「だが、たろうさんならなんでもある」
たろうを知り尽くした園田はそう考え、を切った。
ではなくを切っておくことにより、を引いた時にタンヤオが確定するからだ。
もしたろうがと持っていたとすると配牌からを切らずにマンズのホンイツを目指したんじゃないだろうか… という読みもあったかもしれない。
実際のたろうの手牌は…