苦しいイーシャンテン。
この仕掛けにまともに対応していては親の石川が喜ぶだけだろう。
チームメイトを逆の意味で信頼し、手牌の伸びを殺さなかった園田。
見事とを入れ替えた後に、リーチ・ツモ・タンヤオ・ドラ1の満貫をツモ。
「理詰めの極致」というタイトルにもっともふさわしそうな男が打倒たろうに名乗りを上げた。
こうして迎えた東4局、卓上に火花が散る。
まずは南家・独歩が先制リーチ。
置いてかれた格好になったものの、独歩にもまだ親番は残っている。
私は「山田独歩には男のロマンが詰まっている」とよく言っているのだが、それは妄想なのだろうか。
緻密に考えている上で、独歩の打牌速度は異常なまでに早い。
大きな体躯から繰り出される迫力ある摸打に、男たちは憧れを抱いているはず。
決して私の妄想ではなかった。A卓の勝者予想では
過半数を超える得票を得て、実際にトップ通過を決めたのだ。
この独歩のリーチを受けた石川の手牌。
石川はここから両無筋のを切り飛ばした。
石川も独歩同様、置いてかれた格好になっている。
石川は小さく息を吐いた。たろうへの挑戦権を得るのは、私だ。
私が天鳳を始めた頃に、すずめクレイジーこと石川遼は4代目天鳳位に到達した。
石川遼は天鳳位の中でも異質の存在だ。
鳴きが乱舞する天鳳というフィールドにおいて、じっと我慢を重ね、チャンスを伺う。
麻雀の内容だけではない。
・休日にしか打たない
・少しでも体調が悪かったら打たない
・起床後1時間は打たない
・一戦一戦牌譜を見返す
・ラスを引いたら少し休憩する
といった徹底したコンディション管理を経て、最短で天鳳位にたどり着いたのだ。
言葉を選ばずに言うと地味である。
男ウケする独歩と違い、圧倒的に華がない。
だからこそ、息を荒くしてを押した石川に私は驚いたのだ。
いや、この日を通じて石川は感情をあらわにしていた。
冒頭に紹介した
ここから仕掛けてのリーチに全ツした場面など、その姿は決してチュンチュンとさえずるすずめではなく、獲物を前にした鷹のようだった。
連盟のプロになってから、もう4年の時が経つ。
その間に石川は何を学び、何を思ったのか。
話を対局に戻すと、さらに驚いたのはトップ目のたろうの挙動だった。
石川のに、合わせるように園田が切ったを…
チーして、無筋の→を切り飛ばしてアガリに向かったのだ!
親でドラドラとはいえ、トップ目である。さらに石川が押しているとなると2人がやり合うのを見ていよう、という思考に流れがち。
しかし、たろうは長年の経験でわかっているのだ。
まだ43700点程度ではセーフティリードとはいえない。
親番だから、ツモられたらどうせそれなりの出費になってしまう。
それなら、必ず逆転をもくろんでくる他家たちに対し、点棒は積み上げられるだけ積み上げておいた方がいい。
それにしても…
このはあまりに衝撃的だった。
さらに
園田が追っかけリーチを放つ。
誰一人、道を譲らない。