牌想い──黒沢咲の華ふぶき──【Mリーグ2025-26 レギュラーシーズン 観戦記 3/13 第1試合】担当記者 小林正和

監督から託された「花を添えてほしい」という言葉に、点棒で応えてみせたのであった。

だが、この夜もう一つ別の想いを胸に抱いていたのが


黒沢咲であった。

東4局1本場

【1マン】を引き込みピンフ・テンパイ。点数は大きく沈み、現状ラス目だ。

それでも

リーチへ向かわなかった。
選んだのは、ピンフのヤミテンである。

「このまま、ずるずるいっちゃう気がしたので。まずはしっかりアガリを取ること。」

試合後にそう語った言葉が、この試合で背負っていた苦しさを物語っていた。

以前、黒沢自身が連載するコラムでも、こう綴っている。

「私は麻雀は確率のゲームとは思っていません。」

さらに、こうも書いていた。

「『麻雀において流れはあるか?』ということもよく論じられます。この『流れ』というものを『局と局とのつながり』ととらえたら、私はそれは『ある』と思ってます。」と。

その「流れ」が良くない。
そう思わせた根拠は、はっきりとあった。

それは東2局

親番で、ピンフ・赤・ドラの手をリーチとした局だ。

ところが、他者に押し返されると

掴んだのは一馬へ8,000点の放銃となる【6マン】

親で当然のようにリーチを打った局が、失点という形で終わる事実。その重さは、点棒以上に心へ残るもの。

そして、さらに黒沢の中に引っかかっていたのは、やはり開局の東1局だった。

たろうの高め三色リーチに対し

ドラの【東】を引き込んで追いつく黒沢。

赤・ドラドラと打点こそ文句はない。だが、カン【5ピン】という待ちには不満が残る。

手が止まる中、黒沢が選んだのは


追いかけリーチだった。

それは、いつもとは違う選択。
結果は、たろうへ高めとなる【6マン】を掴み

8,000点の放銃となってしまったのだ。

「特に一番後悔しているのが、東1局のカン【5ピン】で追いかけてしまったところかなと。いつも通りに勝負できる形まで待てば良かった。あそこで出だしが180度変わっちゃったかな。」

“らしくなかった”

その一言が、この試合の黒沢自身を最もよく表していたのかもしれない。

それでも黒沢は、崩れなかった。

そのことは、南1局で見せたある仕草に、よく表れていたのである。

それは何気なく【6ピン】を切った、その直後

山に近い【6マン】をさりげなく左側へ寄せたのだ。

他の人がツモ牌を取りやすいように。ほんの少しだけ。

派手な仕草ではない。
だが、その小さな気遣いに、黒沢の人柄があふれていた。

それと同時にコラムで綴った言葉と重なる。

「麻雀は性格や人間性の出るゲームかな。」

苦しい時ほど所作を整え、目の前の一牌に丁寧であろうとする。その姿は、どこか大和撫子のようだった。

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