トップ目なのに、である。たろうからすれば「なんでトップ目のあなたがそんなに押してくるの」という気持ちだっただろう。
そして来た、かなり危険度の高い
。解説の園田賢が「もう無理、さすがに!」と叫んだ。それでも小川はノータイムで、
を切った。
次の瞬間、実況席が3秒、黙った。しゃべり続ける二人を黙らせたのである。3秒は短いようで、盛り上がりの真ん中では永遠のように長い。今年見た麻雀のなかで、いちばん驚いた3秒だった。
小川の最後の牌は
。やり切った、満足そうな顔をしていた。
流局。ここで手牌を伏せれば、親は流れる。小川は牌を開いて、連荘を選んだ。
私なら、この親は安全にオリて局を流す。アマチュアの私が考える「押しすぎ」は、より思考の深い令昭位の小川にとってはひよこみたいなものなのだろう。ただ、これだけは言える。リーグ戦のように長く戦う場なら、小川はこの牌を切らなかったと思う。ここは最強戦だ。トップ以外には何も残らない一発勝負だ。
超技巧合戦と聞いて、私は細かい手筋の応酬を思い浮かべていた。でも、この局でいちばんの技は、舞台の条件を読み、押すと決める力だった。桑田が三連覇しているのも、きっとこういう思い切りのよさがあるからだ。
追いついてきた申し子
しかし麻雀は、押した人にだけ笑うわけではない。
南2局1本場、優がドラ2枚でリーチ。
テンパイしていた小川は
を引いてオリたが、
で放銃した。
リーチドラ2裏1の8000(+300)。
小川は試合後にこう悔やんだ。「ペン
当たるときドラドラじゃないとおもってしまった。」「最悪のデバサイを打ってしまった」。
南3局、今度は優の番だ。たろうがドラ単騎のチートイツでリーチを打つなか、
アガったのはたろうからの
。
裏1がのって12000。小川42600、優41400。1200点差。
優は東4局の押しについて、試合後にこう話している。「一発勝負のトップしか意味のない麻雀の醍醐味と思います」。小川と同じ景色を、優もちゃんと見ていた。最強戦の申し子とは、こういう人のことなのだ。ただ、試合後に出てきた言葉は「悔しい」だった。
南3局1本場では、魚谷がピンフのリーチで、たろうから2000(+300)をアガった。
優は1200点差だったので、ここはオリている。
魚谷は試合後にこう話した。「我慢の時間が長くて(中略)苦しかったなーと思います」。最速マーメイドが、動けない時間をじっと耐えていた。苦しいなかで、親番へつなぐ一撃を放ったことが、私にはうれしかった。
オーラス 二人だけの競走
南4局。優は小川まで1200点差。2000点以上の出アガリか、300・500のツモが必要だ。小川も、アガりに行くしかない。二人だけの競走である。
小川は
をポンして、6巡目。
小川も優も一向聴で、勝利の女神がどちらにほほえむのか、見ている私にもわからなかった。
先にテンパイしたのは小川。
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の待ちだ。そこへ、たろうが
を切った。
のみ、1000点。ロン。
試合が終わった。小川43600、優41400。たった2200点の差である。
たろうは試合後のインタビューで、頭を下げた。
「ほんとはアガれないの知ってるんでオリたいんですけど、麻雀としてなるべくトイツの牌切って許してくれって感じで切ってました。すいませんでした」。ラス目で、勝負をあきらめず、それでも最後に危険な牌を切らされた人の言葉だと思う。勝負に出る人は、いつもこうやって、負ける怖さの隣に立っている。
小川は、押してよかったのか。結果を見れば、あの押しと連荘は裏目に出て、優に追いつかれた。それでも、私はあの南2局を忘れられない。試合後の小川は、こう話している。
「打ってる最中面白くて、麻雀こんな素晴らしい舞台で打てるの最高だなと思ってた」。
きっと怖さを、胸の奥に静かに置いたまま、
を切ったのだと思う。そんな人が、最後に楽しかったと言えるのが、私にはたまらなかった。
試合後のポストで、小川は反省もあるけれど応援してくれる人たちに勝つ姿を見せられてよかった、と書き、最後は最強位を獲ると結んでいた。
最強戦「超技巧合戦」優勝してファイナルへの切符を手に入れました!!!!!
色々反省するべきところもあるけれども、何より日々応援してくださる皆様に勝つ姿を見せられて良かったです!!
最強位獲るぞ— 小川 光(RMU) (@Ogakohhhhhhh) November 1, 2026
次は桑田の待つファイナルだ。
選ぶ勇気は、舞台に合わせて形を変える。あの南2局の小川の勇気は、押すという形をしていた。



















