南4局2本場
自ら緻密な計算で仕立て上げた、堀の「王様タイム」の開演。
当然のリーチで更に点棒を「かっぱぎ」にいく。
朝倉にしても、アガればラス抜け。順位点にして20P=20000点違う。
すでに決死の2副露で自風の
バックのテンパイ。
堀のリーチ後に通した
と
はいずれも無筋。特に後者は宣言牌の
からも自身の
暗刻からも怖くてとても切れそうにない牌だ。
さらに
と
も無筋。特に後者は両無筋。
このあたりから観戦中の私も、何か尋常じゃないものを観ている気分になり「ぞっ」とし始めていた。
あまりにノータイムの押しすぎて、スクショがうまく撮れないという記者泣かせ。
これも両無筋である
は、解説の土田も「さすがに?」と止めることを示唆した牌だ。しかしノータイムで河にリリース。
朝倉は「王様」のリーチに通っていない無筋を、淡々と、一定のリズムで打っていく。
このあたりから私は、寒気がし始めていた。まさに今日、本格的な風邪を発症してしまったためではあるが、どうにもこのプッシュは、正気の沙汰ではないような気がする。
勇敢な戦士だけに与えられし、ご褒美の
ツモ。
土田氏と同じタイミングで、思わず「うわあ」と感嘆の声を漏らしてしまった。
いや、感嘆というか、畏れや慄きといった方が近いか。霊や物の怪の類を目撃した時の感覚。
ラス回避。
押し切った。
押し切ってしまった。
なぜか私は『カイジ』(福本伸行・著)のいくつかのシーンを思い浮かべていた。
高所に架かる鉄骨を渡り切ったカイジ。
皇帝・利根川を奴隷の身で刺すカイジ。
命を賭して、死線を潜り抜けた。
そうしたデスゲーム的な世界観に挑む主人公の姿を、最終局の朝倉康心に見た。
ラス回避は天鳳の花形。
ラス抜けはW天鳳位の意地。
年季が違う。何より、面構えが違う。
一方、勝者の堀は、見事な個人6勝目。
7戦連続逆連対だったEX風林火山の勝又も、価値ある2着キープ。
下石は、そこそこ離れた点差からの、痛恨のラス転落となってしまった。それでも鉄骨から音もなく無言で落ちた石田さんほど、悲劇的なわけではない。捲土重来を期す。
局後の堀のインタビューが振るっていた。
最後、朝倉の鬼気迫る押しに堀は、
と
とのダブルバックだろうと読んでいた。ところが実際は、
でしかアガれないシングルバックだったと判明。これは片あがりの恰好なのだから、ダブルとは大きな違いだ。それなら
あたりでさすがにオリたほうがいいよと、開かれた和了形を確認して思ったのだという。勝利者インタビューでの敵方へのアドバイスは、さすがに草だった。
これでサクラナイツは、なんとデイリーダブル4回目。
その全てに、エースの堀が関わっているのだという。
悲願の優勝以来、Mの舞台では辛酸を舐めてきた堀と岡田の師弟コンビが、鬱憤を晴らすかのように勝ちまくり、しかしどこまでも「謙虚」に、チームも断トツの首位と好調だ。
最後に。
6連続で無筋を通しアガりきるという、もしかするとMリーグ記録かもしれない激闘の直後、疲労困憊のはずの朝倉康心に、取材と称して「なぜ押せたのか?」と尋ねてみた。
「親リーチに放銃しても次局に満貫条件くらいは残ることが多いと思っていたのと、上下の関係で下石選手が有利なので、そう何度も、アガって着アップできる聴牌は入らないだろうこと、堀選手のリーチ時点では、高確率で
は2枚残っているだろうこと、などが理由です!」(要約)
と、SNS謹慎中の彼から貴重な声を聞けた。試合終了後にも関わらず誠実に対応していただき、その優しさとプロ意識にも感銘を受けた。本当にありがとうございました!
親子かと見紛う土田先生との裏インタビューでは「今日は比較的マシな3着だった」と胸を張ってみせた朝倉。ヘラからの脱却を無事に果たせたことは、何よりもあの気迫の押しが雄弁に語ってくれていた。
よし。もう大丈夫だ。
6本の無筋を押し切った男が、今度は優勝への航路を切り拓く。
天馬行空の自由な発想を乗せた海賊船は、まだ見ぬお宝を目指して、進んでいく。

京都在住の書店員。麻雀戦術本マニア。
天鳳の最高段位は九段。
X:@superflat221














