ドーンブルーの世界を繋ぐ
困り顔の狼。これが私の
「ビースト・ロード」
文・小林正和【金曜担当ライター】2023年9月22日
第2回戦
東家:松ヶ瀬隆弥(EX風林火山)
南家:黒沢咲(TEAM RAIDEN / 雷電)
西家:鈴木優(U-NEXT Pirates)
北家:菅原千瑛(BEAST Japanext)
昨年末からロングランを駆け抜けてきた国民的アニメ「スラムダンク」。その映画が記録的な観客動員・興行収入を叩き出して終映を迎えた。そして大ヒットの波に乗るかのように48年振り自力オリンピック出場を決めた男子バスケットボール日本代表。
(男子バスケ!? …2メートル超えのムキムキの男たちが豪快にダンクを決めるスポーツかな!?)
細かなルールまでは知らなかったが世間の熱に触発されて日本代表の歴史的な大一番を見る事にした。
(…何これ。めちゃめちゃ面白いやん。)
詳しい解説付きテロップのお陰で視聴しながらでもルールを学べたり、身長差50センチ以上ある大きな相手に対して鋭いドリブル突破でシュートを決めるリアル“宮城リョータ”の姿などに感動した人も多かっただろう。
そう、キッカケはシンプル。
“この熱狂を外へ”をスローガンに掲げ6年目のシーズンを迎えたMリーグにも、そのキッカケをもたらす新チームが加入した。
「BEAST Japanext」である。
“雄叫びを上げる。今、新たな戦いが始まる。”をスローガンに、BEAST=獣のような攻撃的麻雀でMリーグに足跡を付ける為に乗り込んで来たのだ。
開幕登板となったのはチームキャプテンの猿川真寿。今では日本プロ麻雀連盟を代表する一人となったが、もともとは出身地である静岡の支部員としてキャリアをスタートさせた。今回のドラフト1位指名は他のエリアに所属するプロにも大きな勇気を与え、正に“地方から麻雀熱を”という側面も担う事だろう。
開幕二戦目、そしてチーム二日目の初戦を任されたのは鈴木大介。
現役プロ棋士でありプロ雀士。あのメジャーリーガー大谷翔平の活躍によってお馴染みとなった“二刀流”という言葉を体現する大介は、将棋界と麻雀界を太いパイプで繋ぐ。
そして、10年以上に渡って日本プロ麻雀連盟の次世代女流として麻雀と向き合ってきた菅原千瑛(すがわら ひろえ)や、乃木坂46の元メンバーでタレント・麻雀カフェ経営としての顔も合わせ持つ中田花奈(なかだ かな)の「ひろかな」コンビが加わり、まるで美女と野獣のような新チーム。(野獣は言葉のあやです…。猿川さんも大介さんも素敵なイケおじ様なのは言わずもがな。)
しかし本日の第一試合目では大介が悔しいラスとなり、まだまだ序盤ではあるがチームは最下位となってしまう。いきなり訪れたピンチであったが、ここで高橋監督が送り出したのは菅原千瑛であった。
R T Dガールズトーナメントや桜蕾戦などの優勝で注目を集めると、応募総数175名に及ぶ激戦となったドラフト会議指名オーディションを見事に制して一気にMリーグの舞台へ舞い降りたシンデレラ。
「攻める時はしっかり攻めて、守る時はしっかりと守り抜く。」
開幕前のインタビューで語ったこの言葉は、同じ団体の大先輩でありTEAM雷電に所属する瀬戸熊直樹が「麻雀プロ団体日本一決定戦」の優勝報告の際に連盟員に送ったものである。
こうして人と人の繋がりも大切にする菅原であったが、チームメイトそして応援してくれるサポーターの期待を背負ったデビュー戦では苦しい表情をしていた。
東4局
(苦しい表情…ん!? …あれ。48,000持ちの一人浮きトップ目じゃん!)
ここから視聴した人は真逆の状況を想像するだろうが、これは苦しい表情ではなく指名オーディションの時にも見せた“困り顔”である。無意識に表れるものらしく、つまり集中しているという良いサインなのだ。そして、あの時のオオカミ・ヘアーが映える。
実況の松嶋も“デビュー戦を祝福するかのようなツモ”と表現したように、ここまで3連続のツモアガリとビーストらしい攻撃を見せていた菅原であったが、仄暗い(ほのぐらい)ステージに潜む牙が光ったのは東4局1本場であった。
この局もスルーから見事にリャンメンリーチまでビーストした親番の菅原。(ビーストってなんやねん。)
偉大な先輩である瀬戸熊直樹の十八番である“クマクマタイム”にあやかって“コマコマ(困困)タイム”とばかりの怒涛の攻めである。
しかし、これに黙っていなかったのは
初めてMリーグを見た人に、「BEAST Japanext」に所属している人は誰と聞いたら9割は選びそうな松ヶ瀬隆弥であった。
後方から追いついた鈴木優のリーチ宣言牌であるを
派手な見た目とは裏腹に、繊細な打ち回しで七対子に仕上げて捉える。