二人がテンパイで追いついて来たという事実が一瞬で思い知らされた事に驚いたのか、先程の表情とは違った一面を見せる菅原。
優も放銃にはなったが、簡単にはオリないという印象を与えられた事はある意味大きい。長いスパンにおいて、ここぞという時にそれが効いてくるからだ。
次局、更に菅原に鋭い爪が襲いかかる。
南1局
それは戦う戦闘民族、鈴木優の鋭い眼光であった。
(獲るか…獲られるか…。)
その端正な甘いマスク1枚取った素性は正に狼を狙うハンターそのもの。
ドラターツである払いから、四暗刻狙いの手組みに切り替えた菅原にテンパイが入ると
優の眼差しにロックオンされたが河に吸い込まれ、一気に点差が縮まってしまう。
迎えたオーラス。
南4局
トップ争いは菅原と優に絞られたが、先に頂に近づいたのは優であった。
どこから出ても逆転トップのメンホン・七対子・ドラ2の単騎待ち。
先程の殺気立つ姿が嘘のようなくらい、今度は気配を押し殺す。そして、その思いに引き寄せられるかのように菅原が戦いの土俵へ。
ノーテン流局ならトップだが残り6巡という難しい状況。対局終了後のインタビューでは
「ビーストならどうするかって考えたらリーチしようと。」
とコメントしたように、デビュー戦とは思えない程の冷静さと責任感を持って攻めの姿勢を貫く。
対照的な二人の戦い。
しかし、意外にもある登場人物によってその終止符は打たれた。
それはセレブリティー、黒沢咲であった。
昨年度の最高スコア賞である個人タイトルを獲得した、ある意味で一番狼に近い黒沢。今日はなかなか勝負に行けなかったと、アガリ・放銃0と長いティータイムを過ごしていたが
(ひろえちゃん。今日はこれくらいにしてあげるわ。)
と聞こえてきそうな程の優雅なダマテンで松ヶ瀬から4着→3着となる出アガリを決めると、菅原のデビュー戦に花を添えた。
赤木晴子(松本圭世レポーター)
「麻雀は… お好きですか?」
菅原千瑛
「麻雀大好きです。」
勝利者インタビューでは、あの有名な「スラムダンク」の名言がやり取りされている様な満面の笑みでチームカラーである夜明けの兆し(ドーンブルー)、そしてチーム初勝利を届けた菅原。
そして、ビースト・ポーズと共に見え隠れしたネイルには4匹の狼と仄暗いブルーのグラデーションが輝いているのだった。
“チームとサポーターと一緒に戦う”
その思いを胸に
私は私の獣道(ビースト・ロード)を歩んでいく。
例えそれが険しい道だとしても…。