絶好調の瀬戸熊直樹。挑む相手は、自分自身【Mリーグ2026-27 観戦記 11/5 第1試合(麻雀ch)】担当記者 虫かご

極めつけは、南4局だった。

前局で寿人とのめくり合いに敗れ、3着目でオーラスを迎えた瀬戸熊。
しかしながら、満貫ツモで柴田までかわして逆転トップをつかめる位置だ。

手牌がこちら。ソーズや字牌が多く、ホンイツがかなり狙えそうだ。
【白】を鳴いたとしても、【赤5ソウ】やトイトイなどを複合させることで、十分に条件を満たせる。

そんな瀬戸熊のもくろみを、圧倒的なスピードで追い抜いていったのが、寿人だ。
両面3つの配牌から、あれよあれよと手が進み、4巡目の先制リーチ。
出アガリでもトップを逆転する【6マン】【9マン】は、山に5枚。

東場でトップ目に立ち、丁寧に丁寧にトップ目を守り続けてきた柴田も、思わず天を仰いだ。

さすがに寿人に軍配が上がったか…… 画面の前でだれもがそんな思いを抱いただろう。

しかし、ゲームは簡単には終わらなかった。

リーチを受けながらも、順調にソーズを集めていた瀬戸熊。
通しやすい筋の数牌や字牌でしのいでいたところに、無筋の【8マン】をもってくる。
ここは一度現物の【8ソウ】切りとした。

それでも、次巡。瀬戸熊は【4ソウ】を引いてくる。
先ほどとは違い「テンパイ」をいれられる状況。
ならばと、一度は手にとどめた【8マン】をプッシュした。

決着は、すぐについた。

直後のツモ番。いつにも増して力を込めた親指で、瀬戸熊がぐぐぐっと牌の感触を確かめる。

その指から、わずかに垣間見えた竹柄。

「チーソ……」

画面の前のわれわれが気付いた頃には、「卓上の暴君」の指はしなり、牌はその姿をあらわにしていた。

最後の最後で飛び出たトルネード。

少しダフってしまい、バチーン、といつものような快音こそならなかったものの、本人も驚くほどのパワーで【7ソウ】をツモってみせた。

2000-4000のアガリで、3着から一気にジャンプアップ。
個人トータルポイントはもちろん、トップ数ランキングでも単独首位に躍り出る8勝目を獲得した。

試合後。

日本中のあちこちで歓声があがったであろう劇的なトップのあとでも、瀬戸熊はいつもと変わらず、淡々と、謙虚に、ユニバースへの感謝を口にした。

そんな様子を眺めながら、ふと彼が試合前に発したひとことを思い返した。

「自分の調子をはかるには、一番いい相手ですね」

今シーズンの各チームを代表するような顔ぶれがそろった対局。
いつにも増して注目度は高かっただろう。

ついつい同じ卓を囲むほか3者への意識が向いてしまいそうだが、瀬戸熊は一貫して「己」と向き合っていた。

誰が相手だろうと、自分が信じた選択に、まっすぐと。

もしかすると、このひとことを口に出来た時点で、勝負はついていたのかもしれない。
どうやら、今季の瀬戸熊は、瀬戸熊自身さえも手なずけているようだ。

いよいよ手がつけられなくなってきた優しき暴君が、ユニバースとともにさらなる高みへと駆け上がっていく。

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