
息を潜めていた茅森にダブ
と
が対子の打点の見える手が入る。一方で多井の配牌だが、

またもなんだかなあといったやる気の出ない手だ。多井のつまらなそうな顔が容易に脳裏に浮かぶ。字牌は残し端牌を落とし、スリムに進行していた多井の元には2枚目の
が。

ここで私は1つ聞きたい。皆さんならここから何を切るだろうか。
や
だろうか。あるいは形を決めてややスリムに構える
だろうか。あるいは役牌の重なりや伸びを見ながら形をほぐす
や
だろうか。

まさかここから
を切る人がいただろうか。どの教科書も昨今流行りのAIも選択肢にすら入れないだろう。日吉もさっきからずっとメンツを壊していると思わずツッコミを入れ、石橋もAIに喧嘩を打っていると笑う。しかし、これだから多井の麻雀にはわくわくさせられる。そして次巡。

あそこで
を切る。だからこの
が出ない。覚えているだろうか。親の茅森に対子の
だ。これをされてはたまったものではないだろう。あわや茅森の高打点の仕掛けが入るところを止める形となった。
「神視点なら確かに切らない
」
そんな何気ないAbemaのコメントが目に止まる。上手く言葉に出来ないがハッとした。神視点とは、全員の手牌が見えている、言わば視聴者側の目線のことをそう呼ぶ。あの
切りにどこまでの意図があったのか、それは本人にしか分からないが、場全体を見渡すメタ的思考と言うのだろうか、とにかく彼の麻雀を視る角度、その切り口が常人の数段上をいっていることは確かだ。結果この局は亜樹の満貫のツモアガリとなったが、多井の思慮深さの片鱗を見た1局となった。
そしてこの半荘は
トップ:太
2着:亜樹
3着:多井
4着:茅森
と、多井は惜しくも3着となったが、以前の怒濤の4着に苦しめられた悪夢からはもう目覚めたと言っていいだろう。これからのアベマズ、そして最速最強にしてエース多井隆晴の活躍からは目が離せない。

日本プロ麻雀連盟関西本部所属 42期後期入会。
麻雀プロ兼京大生。雀荘勤務しながら、麻雀に生涯携わることを夢見て活動中。










