さいばら&山崎の でかぴん麻雀入門【第11回】
野球賭博は言い訳無用
少し前のことですが、相撲界で野球賭博が、常習的に行われていたことが発覚しました。
「野球賭博が暴力団と関係あるとは知らなかった」
ある力士が供述をしていましたが、これはまったく言い訳にならない。
日本には競馬のように自治体が開催しているギャンブルや、パチンコのように法人や個人が運営しているギャンブルがありますが、野球賭博だけは伝統的に暴力団の専売特許だからです。
もし仮りに個人が運営していたら、当局に逮捕されるのはラッキーなほうで、たいていはそのスジの人たちに拉致されて、ひどい目に遭ってしまうくらいなのだ。
決して近づかないようにしてください。
さて、ギャンブラーと聞くと、向こうぶちのような一匹狼で、大きく勝っている人を連想しますが、実際にはそれごくごく少数派。
ギャンブル場にいるほとんどの人は、カモとして負け続けてているか、ハウスや他の組織に属する打ち子なんです。
カモ>>>打ち子>向こうぶち。
たとえばパチンコの場合、一般のお客さんに交じって、ハウスのサクラがいたり、ゴト組織から派遣されたゴト師がいたり、といった具合です。
高レートの雀荘でも打ち子を雇っているところは多い。
店の近くの漫画喫茶などで待機し、電話の要請で客のふりをして店に行って勝負。
店からいくらかの給料を貰いながらのギャンブラーです。
パチプロでも雀士でも、どこの組織にも属さずに大きく勝ち続けるのは至難のワザなのだ。
「もしもし山ちゃん、今日はウチの会社のボーナス日だけど、みんな少ないって文句を言うんだよ。増やせるように、なんとかしてやってくれない?」
20年近く前、白夜書房の取締役編集局長の末井さんからの電話です。
なんとかしてやって、というのは、どうやらバカラを開帳して欲しいということみたいです。
当時は地下カジノのバカラが全盛の時代で、末井さんもぼくもすっかりハマっていた時期です。
さっそく末井さんとも共通の友だちである島本慶さんの事務所を確保し、知り合いのディーラーに頼んで、バカラを開帳してもらいました。
末井さんを含む白夜書房のみなさんのボーナスが減ったのはもちろんですが、島本さんやぼくまでも、巻き込まれて惨敗してしまいました。
ハウスもいいけど リスクは大きい
「もしもし山ちゃん、今日はスキップの忘年会だけど、余興に大小博打を開催してくれないかな?」
今度は島本慶さんからの依頼です。
大小というのはマカオや高田馬場の栄通りの一部で人気のサイコロ博打。
サイコロの目を当てるゲームで、ルーレットのサイコロ版といったところ。
ただし、ルーレットよりもはるかに客に不利な期待値が設定されています。
しかも、ルーレットと違って、賭け方によって、著しく配当の有利不利の偏りがあるんです。
前年も同じようにぼくが呼ばれ、島本さんは一番不利な賭け方をしたあげくボロボロになったハズなんだけど、もう忘れたのかな?
ぼくは内心ニヤニヤしながら、丸めた大小のレイアウト(テーブルに広げる専用のプリント布)を肩に乗せ、意気揚々と忘年会に乗りこんだのでした。
「よっしゃぁ、150倍!」
一天地六。ところがサイコロの出目はままならないもので、一番不利な賭け方をしているハズの島本さんが、ビシバシと高配当を当てて来るではないか。
「山ちゃん、来年もよろしくね~」
忘年会が終わった後、ぼくは軽いサイフと重い足取りで、レイアウトをムシロのように抱えて、ヨロヨロと会場を後にしたのでした。
ギャンブルでは ハウスとゴト師が稼いでいる
ギャンブルライターを長年やってますが、ギャンブルでコンスタントに勝っているのは、ハウスとゴト師だと思います。
かつてぼくは、銀玉親方としてパチンコ攻略ライターをやってましたが、必勝法や攻略法の視点はほとんどゴト師のそれでした。
当時創刊したばかりの「パチンコ必勝ガイド」の攻略研究室では、実際のパチンコ台を使って体感器で大当たりのタイミング取りを練習をしたり、一発台の大当たり穴に玉を強引に押しこむ訓練などをしてました。
パチンコ店のオーナーになるのは無理ですが、違法スレスレの技術と情報で、ずいぶん稼ぎました。
ハイテク系のギャンブルは、技術格差と情報格差こそが命なんです。
当時の法律では合法だったものも(例えば体感器)も、今では違法になっているくらいです。
つことで今回の教訓。
●プレイヤーからだけの視点では、たとえ勝ってもすぐに稼ぎに上限が来る。
●たまにはゴト師の視点も重要。ただしゴト行為はご法度。
●臨時のハウスをやるのにもお金がかかる。勝負に必要なお金は持っていたい。
●野球賭博はプロの仕事。客としてもハウスとしても手を出してはいけない。
(文:山崎一夫/イラスト:西原理恵子■初出「近代麻雀」2010年11月1日号)
●西原理恵子公式HP「鳥頭の城」⇒ http://www.toriatama.net/
●山崎一夫のブログ・twitter・Facebook・HPは「麻雀たぬ」共通です。⇒ http://mj-tanu.com/
コメントを残す