「雀荘メンバーという病」絶えぬセクハラ、女性メンバーは使い捨て【第2回】




雀荘メンバーという病
楽しい職場は地獄の一丁目

【近代麻雀ドキュメント】第2回

文・赤松薫

雀荘メンバー・丸山早紀さん(28)の場合

雀荘に来るお客は男が圧倒的に多いが、店員にはそこに似合わずやたらきれいな人もいる。
彼女たちはなぜ雀荘を選んだのか。いくらの時給で働き何を考えているのか。前回の男性メンバー編で反響を呼んだこの企画、今回は女性メンバーの声をお届けする。

…キャバクラ嬢を経て
タレントへ

「いらっしゃいませ、〇〇さま」

スカートはひざ上10センチ以上、そこから伸びた細い脚は、10センチのハイヒールのせいでさらに長く見える。
視線を上にやると、長い黒髪、白い肌、つぶらな瞳。男性でなくても、その容姿の美しさに目を奪われる。
丸山早紀さんはこの雀荘で働いているが、麻雀は一切打たない。「ウエイトレス」として6年前から勤務している。主な仕事は、フリー客やセット客への挨拶、ドリンクやフードのサービス、両替、見送りなどだ。
ざっと10卓ある店の中に、その日、女子店員は丸山さんだけ。フリー客とセット客、待ち席の客の間を、長い脚でしなやかに移動し、てきぱきと、しかも丁寧に対応していく。
このきれいな女性が、なぜ雀荘で働いているのか? インタビューではまず、ここに至る経緯から聞くことにした。
「生まれ育った九州から東京に出てきたのは20歳の時です。タレントになるために、東京の養成所に入りました」。
九州の高校を卒業後、芸能関係の専門学校に入学。そこから東京の事務所のオーディションを受けて合格する。
「東京行きを決意してからしばらく、キャバクラで働きました。実入りのいい仕事だったからです」
当時働いていた店は日給1万5千円、その店で資金作りのために週4回働く。
「1日3時間でも4時間でも1万5千円もらえたので、東京に出るためと割り切って頑張りました。そしてある程度貯まったので部屋を探して引っ越しました」。

20歳で目指して上京
本業はタレント

こうして東京の養成所に入り、教育課程を経て、現在もタレントとして活動中だ。

 

とはいえ、タレントとしての知名度は低くて仕事もまばら。やむをえず、日銭を稼ぐためのアルバイトをすることになる。
「とにかく時給が高くて時間に余裕のある仕事を探しました。前はパチンコ店で働いていたのですが、すごくきつかったですね。時給は1250円でしたが、パチンコ玉の入った6キロの箱を、1度に3個運んだり、ホール、カフェ、カウンターとやることが多すぎて、続きませんでした」。
他に、ガールズバーでも働いたことがあるという。
「ガールズバーは時給1200円でしたが、お客さんが来ないと早退させられてしまうので、全然稼げませんでした。稼ぎの効率の良さは、地元のキャバクラが一番よかったです」
そうこうするうち、今の雀荘のウエイトレスの仕事を見つけて応募し、採用された。
それが6年前のことだ。

雀荘の仕事はトラブルとストレスだらけ

今の時給は1時間1300円と、喫茶店のウエイトレスよりは高め、一日の平均労働時間は6~8時間。労働時間帯は11時から23時の間と決まっている。交通費は全額支給、制服のクリーニング代が毎日差し引かれ、週5日勤務すると、手取りは月15万円くらいになる。
男性に比べて楽な割に実入りのいい仕事のように聞こえるが、内容はかなりシビアだ。
その実情を聞いてみると、「まず、職場が慢性的に人手不足なのに、人間関係が難しいんです」と。
接客だけで時給1300円という高時給なのに、なぜ人手不足なのだろうか?
「女子店員は見た目重視で採用するので、待遇の良さにつられて応募してくる人は多くても、なかなか採用に至らないんです。そして、いざ採用になっても、女子同士ですぐいざこざが起こります」
女性の職場はいろいろトラブルがつきものという話はよく聞くが、雀荘も例外ではないらしい。彼女たちの笑顔の裏に、いったいどういういざこざがあるのか、具体的に聞いてみたい。
「まず、採用になる子は全員、かわいい子、綺麗な子なんです。それは間違いないので、自分の容姿に自信を持ちすぎていい気になってるんですよね」
丸山さんは、この雀荘では最古参。最近入店してくる若い女の子の態度に苛立ちを感じることが多い。
「言った通りにしないんですよ。例えば、お客様に飲み物や出前のお食事を運ぶときに、お盆を使う決まりがあるんですけど、手で直接持って行っしまいます。裏で注意しても『ハーイ、すみませーん』みたいな適当な返事しかしなくて。若くてかわいい自分は、ちょっとくらい手を抜いても許されると思ってるんです。それを厳しく注意すると、仕事中に泣いてしまったりしてほんとうに面倒くさいです。
それを男性従業員がかばうのも嫌ですし、私が若い子をいじめている『お局様』みたいに言われるのも不本意で、すごいストレスです。私はちゃんと仕事をしようとして努力しているのに」

客からのセクハラも
後を絶たない

「お客様からのセクハラもしょっちゅうですね。脚が見たくて、大した用事もないのに何度も呼びつけるお客様もいますし、ひどい人は、お見送りの時に脚を触ってきます。

内ももをさっと撫で上げられて全身鳥肌が立っても、笑顔で『もー、やめてください』とかわします。怒って注意するのは、店長や男性従業員の仕事なので、私は一切怒れません。
一度、どこからつけていたのか、帰りの電車の中で横に座って映画に誘われたことがありますが、その時も、適当にはぐらかしました。そのお客様は、もう来なくなってしまいましたが」
雀荘の女の子を見て「かわいいな、つきあいたいな」と思う男性客は多いが、実際に行動を起こされると、対応する女性側はさぞかし大変だろう。
「たまったストレスは休みの日にパチンコで解消していますね。

麻雀は、スマホでをちょっとやるくらいで、まったくする気にならないですね。休日まで麻雀打ちと接するのがイヤなのかも(笑)」

同棲中の恋人との将来が見えない

丸山さんは4年前から、1歳年下の恋人と同棲している。結婚や出産について聞いてみると、まず「不安で仕方ない」という返事が返ってきた。
「彼氏はもともとタレント養成所の後輩です。うちに転がり込んできて、気が付けば恋人になってました」
部屋は上京した時から住んでいる1K+ロフト。西武新宿線の各駅停車しか止まらない駅の近くだ。
「家賃と光熱費は完全に折半で、財布も別々です。月1回くらい一緒に飲みに行った時は彼が出してくれます。夕飯は、私が23時まで働いて、0時過ぎに帰ってから作り、一緒に食べます。彼も家電量販店の派遣社員として遅くまで働いているので、だいたい生活時間帯は合っていますね」
時には彼のお弁当も作るというので、もうすっかり夫婦同然だ。
「私は結婚したいと思っていますが、あまりにも経済的に不安定で、先が見えない状態です」
しかし、雀荘の収入にタレントとしての
収入も加算すると、丸山さん自身の生活はそれほど苦しくないはずだ。
「私の財布は、同世代のフリーターの男性と比べて特に苦しくないかもしれませんが、とにかく不安定なんです。タレントとしての仕事は、あったりなかったりで、月に平均4万円くらい。多い時には月30万円ということもありましたが、タレントの仕事をしている日は当然雀荘では働けませんから、タレント業が多い月はその分純増というわけでもないです。
しかも雀荘の仕事はちゃんと月末払いですが、タレントの仕事は数か月先に振り込みということが多く。タレント業が入った月のほうが手持ちの現金が少なくなるのが現実です。オーディションを受けるときも撮影現場に向かう時も、それなりの洋服を着て化粧をしなくてはいけないので出費も多いんですよ」
確かに、美貌を維持するのにもお金は必要だ。「美容院なんか半年以上行ってないんですよ。毎日自分でコテで髪をカールしてますし、ネイルは一切していません」と、広げて見せてくれた指は、なるほどすっぴん。もっと美しくなれるのに、節約のために我慢しているのが痛々しい。

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