熱論!21人のMリーガー
前原雄大・麻雀格闘倶楽部
〜踊る!レジェンドが
反撃の狼煙を上げる〜
文・ZERO【KONAMI麻雀格闘倶楽部担当ライター】
「いつ人生が終わっても不思議はないところにきていますから。悔いのないよう、このMリーグという舞台で踊りきれたらいい」
前原雄大。
20年以上も前の話だ。私が麻雀を覚えた学生のころ、前原はすでにプロの一級線で活躍していた。いわゆる「レジェンド勢」だ。
当時、麻雀界では唯一の活字月刊誌である「月刊プロ麻雀」という雑誌があり、私は近代麻雀と同様に楽しみに読んでいたものだ。その「月刊プロ麻雀」の中でも特に好きだったのが前原の「勝手にしやがれ」というコラムだった。「勝手にしやがれ」では、牌姿が1つ2つ出てくるものの、どちらかというと麻雀の技術論ではなく前原の心理描写がメインであり、その多くが負けて反省する…という内容だった記憶がある。麻雀、基本的にはうまくいかないことの方が多いので、そういう意味ではとても共感できたのだ。そして今やその繊細な表現に惚れ込んだ私がこうして自分の思ったことをそのまま言葉にして発信するようになったのは、もしかしたら前原の影響が大きいのかもしれない。
勝手にしやがれ…大胆不敵なタイトルとはうらはらに、とても謙虚な人なんだな…と感じた。
そう、前原はとても謙虚なのだ。
私が取材したときの話だが、このとき前原は対局30分前にもかかわらず「ここから階段をおりて会場に向かいます」「ここでボディチェックをします」「ここが対局場です」…と、会場の隅々まで案内してくれた。
鳳凰位4期、十段位5期…前原が獲得したタイトルを挙げていくとキリがないが、日本プロ麻雀連盟の一期生として30年以上プロ活動を続けて多くの実績を残している大御所であるにもかかわらず、どこの馬の骨ともわからない私に対して丁寧に、そして自然体で接してくれていることに、驚きを感じた。
とぼけた話をし、自分で突っ込む。
あまりに丁寧でゆっくりとしていて、自然体なので、実家に帰っておじいちゃんと話しているような安心感を覚えた。
しかし取材中、そんな前原の眼光が鋭く光ったことがあった。
私が寿人プロの写真撮影をお願いしたときだ。
この日、寿人プロはものもらいを患っていて眼帯を装着していた。スマホを掲げた私に
「それはマズいな…ほら、寿人はカッコよくてスマートなイメージじゃないですか」
結局どのみち次の日の配信に出るとのことで掲載許可はおりたのだが、この瞬間に強く感じてしまった。
今でこそ配信全盛期であり、いかに「ファンに楽しんでもらうか」を考える時代に突入したと言えるが、前原は30年以上日本プロ麻雀連盟という「見られる」ことを一番に意識して活動してきた団体の最前線を守ってきたのだ。
また、悩める高宮にはこんな声をかけている。
「よそ行きの服は着てくるな。普段着の服で行こうぜ、後は俺らがなんとかする」
ちょっとカッコよすぎやしませんか。
チームを守るため、イメージを守るため、プロとして…とぼけているようにみえても、根底では強いプロ意識があるんだな…と感じ、少しでも前原さんに近づけたと勘違いしていた自分を恥じた。
そしてこの頼もしい言葉を象徴するかのように、この日の前原は強かった。
開局、いきなり村上から早いリーチが飛んできた場面。
一発を受けた西家の前原。ひとまず字牌を切ってもよいとは思うのだが、前原は宣戦布告とばかりにから押していった。
その後もドラを引くなど完全押せ押せムードになり…
あっという間にハネマンのアガリ。
顔を紅潮させて悔しがる村上とは対照的に前原は自然体だ。
「いつ人生が終わっても不思議はないところにきていますから~」
の言葉の通り、前原の心には邪念がなく、澄み切って落ち着いているように映る。
トップ目で迎えた南1局。
役牌のをポンして、ここからを切った。
なるほど、テンパイするまで(もしくは近づくまで)は安全牌のを残して安全に局消化をしようということか。もしくはソウズのホンイツも視野に入っていたのかもしれない。
そして親である多井のリーチを受けてテンパイした場面。
この浮いているを切ることができるか。
多井の捨て牌は
←リーチ
となっている。
見ている我々は多井の待ちがわかっているため「前原さーん大丈夫だよー」と気軽に思っていたが、多井は親。マンガンを放銃したらラスになる展開まであるし、のトイツ落としから好形率や平均打点は高そうだ。さらに言うとはドラまたぎでもある。普通に考えたら2000点のカンチャンで向かってはいけない手牌だ。
前原は長考。これまでの30年以上の経験と、チームの現状と。そして前原が下した決断は…
魂の勝負!!
ここでこのを押すのはコナミ麻雀格闘倶楽部のメンバーだけではないだろうか。
そして次にツモってきたのが…