オリるならを切って3巡凌ぐ…という手もある。この捨て牌なら何を切っても放銃率に大差はない。
は押しにもオリにもなっていない、中途半端な選択だと感じた。
おそらく寿人も後悔しているハズだ。
しかし、逆に言うと、悪い部分が最初のうちに出てよかった…とも考えられる。
なぜなら、その後の寿人はこの放銃のおかげで吹っ切れたようにアガリ出したからだ。
この時はラスを引いてしまったが、また次の対局だった。
オーラスの最終打牌。
このを切るかどうか。
魚谷がソウズを2つ晒してこの手牌だ。
とが余ってテンパイ模様。実際にテンパイしている。
あの初日の放銃が寿人の脳裏をかすめる。
いや、寿人にはもう迷いはなかった。
スクショをとるのに難儀するくらい、あっという間には場に放たれていた。
ここで弱気をみせたら、微差でトップ目の魚谷は伏せるかもしれない。
どうせ倒れるなら、前向きに倒れよう。
あの村上に放銃したは攻めた結果だが、あの瀬戸熊に放銃したのような後悔はしたくない。
その後の寿人の活躍は凄かった。
Mリーグ初の役満を和了。
寿人は団体対抗戦でも地和をアガっており、あまりこういう表現はしたくないのだが、「持っている」としか思えない。
さらに
終盤・片割れが2枚見えている、というシャボ待ちでリーチ一発ツモ。
攻めに攻めた結果、前半の借金を返済して、なんと個人成績プラスに躍り出た。
格闘倶楽部も、一時期400pt前後あったマイナスが今や-141.8ptだ。
降っては消えていく雪を眺めながら、私は幼少のころから疑問に感じていることを思い出した。
雪が積もるためには消えずに残る、「最初の一粒」が必要だ。
その「最初の一粒」はどれだけ強く、尊いのだろう。
とけることなく踏ん張り、上から降り注ぐ雪を支え続ける、一番下の一粒。
2018年の年の瀬、5連闘で6位に浮上した前原の奮闘が、最初の一粒だったように感じる。あとは寿人が、高宮が、その上に白星を積み重ねていくだけだ。
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麻雀ブロガー。フリー雀荘メンバー、麻雀プロを経て、ネット麻雀天鳳の人気プレーヤーに。著書に「ゼロ秒思考の麻雀」。現在「近代麻雀」で戦術特集記事を連載中。note「ZEROが麻雀人生をかけて取り組む定期マガジン」、YouTubeチャンネル「ZERO麻雀ch」