熱論!Mリーグ【Fri】
渋谷ABEMASの苦悩。
「振り返ってはいけない」
そこにはもう…⁉︎
文・阿部柊太朗【金曜担当ライター】2019年1月18日
今日が何の日かご存知だろうか?
Mリーグをたしなむ紳士淑女の皆さまとは縁遠い話だと思われるが、本日はセンター試験1日目だ。人によっては共通一次試験と言うべきだろうか。
©朝日新聞デジタル
かくいう私も数年前、大雪の降る中を重い足取りで会場に向かった記憶が、今も鮮明に残っている。
そんなセンター試験1日目には鉄の掟がある。
「振り返ってはいけない」
問題を解き終わると、ああだこうだと反省してしまうのが人間の性。あの選択は合っていただろうか?と参考書やスマートフォンで調べてしまう。さらに夜には各予備校から模範解答が公開される。振り返るなという方が無理な話かもしれない。
しかし、鉄の掟とされているからには意味がある。今振り返ることは何の得にもならないのだ。2日目に向けて、先を考える方がよっぽど有意義である。
個人ポイント最下位、白鳥翔は今日も苦しかった。
南2局、大きく点棒を減らして迎えた親番。なんとか点棒を回復したいところだが、寿人のリーチと茅森の仕掛けに挟まれて以下の手牌。
この局面だけ見ると、1枚切れのくらいスパッと切りそうなものだ。だが白鳥は打として手を崩した。
どうしても連荘したい親番、白鳥に一体何が起こったのか?
その答えは寿人のリーチにあった。時間を巻き戻して寿人の手順を見ていこう。
4巡目、寿人はツモったをメンツの中から空切った。前巡に切ってあると併せてリャンメンターツを落としたように見せたのだ。捨て牌でプレッシャーをかけ、相手に手牌を狭く受けさせる。そうすることで自身がリーチ→ツモとするための時間的猶予を稼ごうという思考だろう。寿人が人よりもツモツモツモツモ言っているように感じるのは、こうした細かい手順を徹底しているところにある。
この手順が、後に白鳥の読みを狂わせる。
次巡、を引いて打。雀頭が無いので当然の手順だ。
9巡目、浮いていたが雀頭になって切りリーチ。このリーチ宣言牌の、他家から見ると違和感があるように映るのはお分かりいただけるだろう。
・白鳥と茅森に対しての安全牌で持っていた、手牌に関連していないケース
・アンコから切ったケース(手順的に違和感があり、後に3枚目が見えて否定される)
・今回のような雀頭のないノベタンのケース
ということももちろん考えられるが、白鳥は…
・チートイツなどの変則手のケース
を強く意識してしまったのではないだろうか。
そうなると待ち頃になりそうな牌は限られてくる。場に1枚見えているかかドラ。
しかし、それだけなら危険を承知でを叩き切っただろう。この親番を続けることは、それ以上の価値があるからだ。
問題はを通した次に出ていく牌にある。寿人・茅森の両者に通っていない超危険牌のドラであるを切らなければいけない。しかもテンパイに必要なは場に4枚見えてしまっている。
考えれば考えるほど、ネガティブな要素がザクザク出てくる。本当に断腸の思いでオリを選択した。
流局して開けられた両者の手牌を見て、人ならこう思うに違いない。
「ああ、押しとくべきだったかな…」
しかしこれは事件へのほんのプロローグにすぎなかった。
南3局、7巡目にカンでテンパイ。
現在2着目で親の寿人から強い押し返しが想定される場面。を残して好形への手変わりを待つ手もなくはない。
しかし1,000・2,000をツモれば、オーラスにマンガンツモで茅森をまくって3着目に浮上する。着順UPを目指せば即リーチの選択も妥当だ。
こういった愚形リーチを嫌う人は多いが、着順にこだわらずとも、基本的にドラ1の先制リーチは得になる局面が多い。
ツモって裏が乗ればマンガンになる上に、流局時テンパイ率など様々な点を考慮するとトータルでは確実にプラスにはたらく。
さらに今回はトップ目の萩原が交わし手の仕掛けを入れており、局を消化しに来ている。萩原の手を止めに行く狙いもあっただろう。リーチの効能は実に多様だ。
しかしやはりと言うべきか、親の寿人から追っかけリーチが入る。
無情にも白鳥が一発で持ってきたのは、寿人の当たり牌の。
そしてそのがまるっと裏ドラに。リーチ・一発・ドラ・裏3。
寿人は、さも表ドラがであったかのように、素早く、ドライに「18,000」と申告。
こんな時、人ならばこう思うに違いない。