不正が横行する
ギャンブル業界
学生時代に、高田馬場のアパートから池袋まで歩いて、立ち食いそば屋のアルバイトに通ってました。
途中で、線路脇に落ちているコーラの空きビンを拾って、酒屋さんで換金したこともあります。
時代も貧しかったけど、私はさらに貧しかったんです。
立ち食いそば屋は終電近くに閉店。大急ぎで店内を掃除するんですが、毎日調理カウンターの下から、小銭がだいぶ出てきました。
「誰の金か分からないので、みんなにも分けてやるよ」
チーフは、半分を自分で取って、残りを私たち数人のアルバイトに、百円か二百円くらいずつ分けてくれました。
もちろん、このお金は店の売り上げが、床に落ちたもの。 後で分かったんですが、実は店長や古株の従業員は、ワザと小銭を床に落としていたんです。
コーラのビンで思い出したんですが、ある酒屋の従業員は、倉庫の空きビンを1ケース悪友に渡して、それを自分の店のレジで換金させていました。
換金されたビンは、倉庫に入って、再び悪友経由でレジで換金される。これってエコシステムなのか?
学生時代に高田馬場のパチンコ店で働いていた時も似たようなことがありました。
気前のいい店長は、部下の私たちに、パチンコの景品のタバコを、毎日タダで支給してくれました。
時には缶詰めや下着類までくれるので、貧乏学生の私には、とてもいい人に見えました。
もちろん、これらは会社の資産なので、いい人どころか、どろぼうに近いんでしょうけどね。
自分のものじゃないんだもん、気前がいいワケです。
当時はまだ、パチンコの特殊景品の買い取りシステムが完成していない時代。
店によってはタバコを景品として出して、それを「買い屋」が引き取っているケースがありました。
これも店長がクビになってから知ったっことですが、店長は「買い屋」にタバコを大量に横流ししていたんです。
実は私も人ごとではないことがありました。
私は学生時代に雀ゴロ生活から足を洗い、高田馬場の雀荘の雇われマスターになりました。
今で言う店長のことですが、当時は雀荘や水商売の店長は、だいたいこう呼ばれてました。 赤字の店の立て直しを引き受けたんですが、数か月間の自腹の持ち出し分が数十万円。
「社長、イベントなどの持ち出しの負担が厳しいんで、うどんの店内販売を、自前でやらせてください。月に一万円くらいずつでも回収したいんで」
ガス代として社長に一万円だけ払う契約です。
ところが店が繁盛するにつれて、カレーやかつ丼なども増やして、かなり儲かるようになったんです。
「ヤマ、お前食事販売でだいぶ儲かってんじゃないのか?」
「んなことないっす社長。ほんのチョボチョボです。ダハハ」
「今度、一杯おごれよ」
ギャル雀でナンパして
ダハハな生活ができるか?
当時その店のバラ打ち(フリー)に、中年のカップルが現れました。
女性は近くのスナックのママ、男性はたぶん客でしょうね。
同卓希望の2人連れが来ると、他のお客さんに配慮して、雀荘のほうは少し気を使います。
現在私が経営している店では、トイメンどうしに座ってもらいます。
上家下家に座った場合、上家が下家に甘い牌を鳴かせたと、他のお客さんに思われないためです。
ところがですね、手積みの頃の私の学生時代は、それは却って逆効果。
ベテランの方は、お気づきだと思いますが、積み込みのイカサマをやるのには、トイメンどうしに座ったほうが便利なことが多いんです。
たとえば配牌に大物手を仕込んだ場合、サイコロの目がズレても、仕込んだ牌はトイメンの仲間に流れるんです。
で、そのカップルは、お互いに待ち牌などを知らせるサインを使い始めたようでした。
「ねえちゃんリーチか。そのリーチ棒の置き方はマンズの上待ちかい?」
ベテランの常連がからかいます。
カップルはイカサマ以前に、元もと麻雀自体がヘタ。
仲間のリーチに放銃するつもりが、他に放銃したりとか。
最後は2人とも負けて、口喧嘩してました。
帰りじたくをするママに、常連さんが耳打ちしてました。
「今度は俺と、麻雀の他にも色いろ組もうぜ。わはは」
当時も今もそうですが、組んでやるイカサマは、一人でやるよりも軽蔑されます。
特にカップルの場合は、ヤッカミもあって視線が厳しい。
「ギャル雀の女の子をナンパして、組んで麻雀を打てば、女と金の一石二鳥!」
現代なら、こんな夢想をする人が、もしかしたらいるかもしれませんね。
確かに、雀荘で働いている女性は、麻雀が強い男性が好きな傾向があり、自分より弱い男性と付き合っている女性は少ないように思います。
ナンパは専門外なので何とも言えませんが、「組んで麻雀を打つ」というのはかなり疑問。
店に行っても、必ず同卓できるワケではないし、仮にできたとしても、点5のギャル雀ではたいした稼ぎにはならないからです。
それに、腕のいい常連さんや、店長クラスになると、その程度の不正には気づくんです。
水商売などでも、自分の彼女の働いている店に、男が顔を出すのはあまりカッコいいとは言えません。
飲む金が彼女が稼いだ金だったりするとなおさらですよね。