Mリーグ2018ベストオブ【園田賢】〜21人のMリーガー名場面集〜

Mリーグ2018

ベストオブ【園田賢】

21人のMリーガー名場面集

文・梶谷悠介

 

「赤坂ドリブンズ、最高位戦日本プロ麻雀協会、園田賢」

 

2018年8月7日、Mリーグはこの男の名前を呼ぶところから始まった。

「ん?誰だ?」と思った視聴者も少なからずいただろう。Mリーガーで最も知名度が低かったと言っていい。そんな園田だったが、Mリーグが終わる頃には

『午後8時からのマジシャン』

として最も印象に残る打ち手の一人となったことは間違いない。

 

2018/10/1開幕戦

トップバッターを任された園田。やはり表情に硬さが残る。

だが開局早々にそれを吹き飛ばすような爽快な声が卓上に響き渡った。

「ポン」

記念すべきMリーグ初の仕掛けは園田からだった。

これまで麻雀プロの放送対局といえば重厚な手作りというのが基本的なイメージとしてあった。赤のないルールだったとはいえ、麻雀プロとはそういうものだという認識が旧来のファンにはある。少なくとも東初から役牌のバックで仕掛けた場面を私は見たことがない。

Mリーグ最初の仕掛けがバックだったことに、新しい麻雀プロの姿が象徴として見えたのは私だけだろうか。

そしてそのままをポンして2600のアガり。もちろんMリーグ初のアガりである。

麻雀ファンによる園田へのファーストインプレッションはこうして完成した。

園田がMリーグを通じて活躍できた理由は、ただ腕が良かったからだけではないと思う。ときにこのような『持っている』としか思えないアガりを成就させてきたことも関係するだろう。

ダントツだった小林から18000をアガりトップを逆転。波乱に満ちた開幕戦を制することになる。

記念すべきMリーグ初トップである。それにしても嬉しいはずなのに表情は硬いままだ。この1カットだけでも隣のまつかよとのテレビ慣れの差がわかるだろう。

2018/10/15

園田の魔法はこの日はっきりとファンに披露された。親でこの配牌からポンとしと払っていく。さて、この手が何点になっただろうか。

既にリーチを受けている。現物はがあるが、打として一歩踏み込んでいく。

園田の魅力の一つはこの絶妙な押し引きバランスにある。仕掛けを入れた後に相手から攻撃を受けても、攻め守りどちらかに偏ることをしない。丁度中間の最もバランスの良いラインをタイトロープを渡るようにたどっていく。

その先にあるのは8000オールだった。

仕掛けの多い打ち手にありがちな安手を連発し手詰まりながらオリていくというタイプとは全く違う。ときに大物手をアガり、ギリギリまで踏み込んで戦う園田にファンが魅了されるまでそう時間はかからなかった。

私がこれを観戦していたときは、「すげーこれはすげー」とまったく語彙力のない感想しか口にできなかった。そしてその次に口から出たのは

「なんやこの仕掛け?」である。

園田がマジシャンと呼ばれるようになった理由は2つある。1つは前述のように決して良いとはいえない配牌から見事なアガりを決めることだ。そしてもう1つは画像のようなタネ(理由)のわからない仕掛けをすることにある。

園田はファンに投げかける。

「この仕掛けの意味がわかるかい?」

そしてファンは考えさせられる。そのときすでに園田に魅了されているのだ。

だから私が今更これのタネ明かしをするのは野暮というものだろう。気になった方は麻雀の強い方に画像を見せて聞いてみればいい。

2018/10/19

園田の魔法は観ているファンにとっては面白いことこの上ない。だが同卓者にとってはとてもやりづらいだろう。

をポンした園田、周りからはどう見えているだろうか。

ドラのは切りづらい。トイトイが絡むと跳満まで見えることから慎重な亜樹はまわらざるを得ない。

親の近藤も園田の仕掛けがなければ前巡にを切ってテンパイを取っていたのかもしれない。をおいたばかりに一手遅れている。

園田の魔法はドラのという幻想を使って周りの手を封じていく。

そして猶予を作った間にアガりをものにする。このように周りを牽制しつつアガリを拾う場面を何度も見てきた。

それでは攻撃を受けた場合はどうか。近藤はポン打としていかにもテンパイなところから打としてに受け変えた。

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