Mリーグ2018
ベストオブ【二階堂亜樹】
21人のMリーガー名場面集
文・阿部柊太朗
変わらないもの、変わっていくもの
最年少女子プロ。
デビュー当時の二階堂亜樹のキャッチフレーズだ。
圧倒的なルックスのみならず、若くして卓越した麻雀力を備えていたことも、彼女の人気を大きく後押しした。
19歳の亜樹が放送対局で直面した有名な何切る問題がある。
南1局 トップ目 親番 ドラ
亜樹の選択は打。
マンズのの受けが被っているので、この選択が最も受け入れが広い。
今でこそこのような選択が出ることに驚きは薄いが、19歳という年齢で牌理に対する深い理解を持っていることで、当時は非常に話題になったという。
あれから20年近くが経過した。
亜樹は結婚し、1児の母となった。
なったはずだ…よね?20年経ったというのは嘘なのだろうか。
いや、そんなはずはない。村上淳の変化を見れば時が経過していることは、自明だ。
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亜樹は美貌と雀力に磨きをかけ、このMリーグという麻雀界の一大ムーブメントに足を踏み入れた。
開幕当初、亜樹は持ち前の守備力を生かし、ラスを引かない麻雀を展開。放銃を避けながら綺麗に回し打ち、アガリを拾う亜樹の麻雀は玄人をうならせた。
しかし守備を重んじる反面、アガリに向かう泥臭さに欠けていたように思う。
気になったのは2018年10月19日の対局。
が2枚切れであることとが3枚切れにより、自身のアガリが相当薄いと判断し、亜樹は打としてオリを選択。
たしかにこの、村上のリーチには通っているものの、魚谷のチー打に対して若干打ちにくい。
しかし、仮にが当たったとして果たして何点なのだろう。ドラのは見えていて自身で赤を2枚使っている。
で魚谷に当たってもほとんどのケースは1000点だろう。親リーチを1000点で流せることは決して損なことではない。限りなく薄いとはいえ自身のアガリの可能性、流局時のテンパイ料も込みにして考えると、切ってしまっても悪くないように思える。
邪推だが、亜樹の気持ちの中には
「無暗に放銃率を上げたくない」
というようなブランディングの気持ちもあったのではないだろうか。
この局は魚谷が300-500をツモって平穏に終わったものの、亜樹からは「何としてもアガりたい」という意欲以上に「放銃をしたくない」という気持ちが感じられる場面が多くあった。
さらに時は経過してファイナルシリーズ第10回戦。
ドリブンズと首位を争う状況の中で、亜樹の変化は明らかに見て取れた。
親で大三元をアガった前原が、頭2つ抜けて迎えた南2局。
を仕掛けて1,000点のテンパイを入れていた亜樹。親の多井の2フーロに対して非常に切りにくいを持ってくる。
素直に読むならば、多井の待ちは
マンズの、、のどれかだ。
放銃しないことを目標にするならば決して打つべき牌ではない。
少考の末、亜樹は押した。あの時とは違う。その姿勢は紛れもなくアガリに向かう泥臭さだ。
結局は多井が1,500をアガり、亜樹の押しは実らなかった。しかし亜樹の攻撃的な姿勢が意思となり、そして結実する。