昨年までMリーグの1ファンであった監督は、ABEMAS…特に多井プロが好きらしく、何度もパブリックビューイングに足を運ぶほどの熱狂ぶりだったという。
7月のドラフトを前に、いてもたってもいられなくなり、KADOKAWAのMリーグ参入を立案。
メンバーも自身が選出し、こうして昨年とは違う場所でMリーグを迎えるとあって、とても感慨深そうだ。
PM18:55 開戦
…コンコン。
ノックの音が響くと、談笑していた控室に一気に緊張感が走った。
「サクラナイツさん、出番です」
いよいよサクラナイツ初陣のときがきたのだ!
内川プロが対局場に向かう。
リストバンドをアピールしながらの入場。
やる気は漲っていた。
しかし対局が始まるや否や、新加入のチームに洗礼を浴びせるような既存チームの攻撃が始まった。
まずは親番の高宮まりの手が止まる。
通常
というような、リャンメン+リャンカン+リャンメンフォローというイーシャンテンは、頭を固定してしまう(打)のが現代流だ。一昔前はかを切ってソウズで頭を作り、ピンズのリャンメンを活かす…という戦術が主流だったが、打でもツモやツモでの変化は残るし、何よりダイレクトテンパイを逃すのが痛すぎる。
ソウズがこのように頭の作りやすい形なら打とするのがよいだろう。
…というわけで、高宮も一瞬に手が伸びた。
しかし、思い直した。この手牌には123の三色があるではないか。
私の進む道は…
開幕戦の東一局だからこそ、自分に問いかけるように高宮は慎重に
打を選択したのだ。
高宮の決断に牌も呼応する。
を残したことで、このツモをしっかりキャッチ。
こうして
123の三色にはならなかったものの、満足のいくテンパイに辿り着く。当然のリーチだ。
周りも、小考した後に打ち出された
を見て高宮が早いことは感じ取っていた。
どうみても十分形だろう。
一人旅になるかと思われたが、立ち向かっていく男が1人だけいた。
鈴木たろうである。
高宮の親リーチを受けた鈴木たろう、なんとこのイーシャンテンからをツモ切ったのだ!
100人いたら99人が1枚切れのを切る場面だと思う。は自分が2枚切っていて、愚形含みでドラが1枚のイーシャンテンでは、とてもじゃないけど親のリーチには押せない牌だ。
いわゆる「期待値」で言ったら明らかに損な選択。でも、たろうはそんなことは100年前から知っている。我々がわかっていることは全てわかっているのだ。
つまり、なんらかの読みが働いたのだ。
前述の通り高宮さんのリーチはリャンメン待ちが濃厚だとすると、
を切っての待ちは
が思い浮かぶが、それだと4巡目に切ってあるがおかしい…と思ったのだろうか。それにしたって例外はあるし、開局から読みと心中して一歩踏み込む姿はさすがの一言だ。
次巡、たろうは
最後のを掘り当て、100人中99人が河にを3枚並べるであろう場面で、悠然と追っかけリーチを放った。
こうして
たろうは高宮から裏ドラ3枚を乗っけた8000のアガリ。
打点と形を求めた高宮、それに対応した周り、その中で立ち向かっていったたろう…
Mリーグが始まったんだな…と実感するには、十分な一局だった。
特に驚いたのは高宮だ。
東2局。