それでもなぜ高宮は押したのか…?
もしかしたら…だが、

石橋がをポンした時、若干の間があったことを見抜いていたのかもしれない。







ポン ポン
こんな手なら迷うことなくポンするはずだ。
高宮はその一瞬の迷いを見逃さなかったのか――――
いや、そんな細かいことは考えていない気がする。
たかだか35500点の点棒で守っていても、全員がトップを狙ってくるメンツで簡単にトップを取らせてくれはしない。
ならば、今、目の前にきたチャンス手で、とどめを刺しにいくべきだ。
優位な状況だから守るのではなく、
優位な状況だからこそ決定打を狙うのだ。
狂戦士の、目覚めた音が聞こえた気がした。

そんな高宮の押しに呼応して、テンパイが入る。
前巡に石橋と茅森から打たれたをスルーしていることもベルセルクポイントだ。
ここでは打としてカン
待ちに受ける。
そうこうしていると

親の松本からリーチが入る。
やはりそうだ。石橋の仕掛けにオリたところで、親の松本がくるのだ。
そう考えると、自分の手がアガれそうなときにまっすぐを切る判断は、間違っていないと思う。しかしベルセルクの真骨頂はここからだった。

まずは一発目にを掴む。
を切るか…?
を切るか…?
松本のリーチは、石橋の仕掛けを見て、ピンズが切りきれずにピンズ待ちになった…ってことはよくある話だ。
しかし、高宮はそんな幻想に怯えることなく

を押した。
続いて松本のツモ番…ツモれるか…?

ツモれない。待ちの松本は、持ってきたピンズ(
)を思わず強打する。
松本とて、ここでアガると放銃するでは大きく変わってくる勝負所。どうしても力が入る。
今度は高宮のターンだ。ツモれるか?

ツモれない!…それどころか、場に1枚も見えていないをツモってきてしまった。
は3フーロの石橋に危険だし、かといって
は松本のリーチに危険。

(オリルのは簡単だわ。ここでオリても誰も文句は言わないはず。でも考えて…石橋さんにマンガンを放銃したところで、オーラス勝負になるだけね…ならば…!)
と思ったかどうかわからないが…

高宮はを打った!
ハッキリ言って、これが当たらなければ、どの牌が当たるんだって牌である。

(が当たるんだ!)
続いて高宮は

松本のリーチに通っていないを掴む。
松本の捨て牌にと並んでおり、マンズならここでしょ!という牌だ。

――私は、どうやったって寿人さんや前原さんにはなれない。
ましてや忍者にもなれない。
でも…

私は私、高宮まりとしてMリーグの舞台で打ち抜くことはできる!
地の果てまで追いかける、ベルセルク、狂気の切り!
今までたろうや寿人などのとんでもない押しを見てきたが、この高宮の猛烈プッシュはMリーグ始まって以来の押しっぷりだと思う。
だって、いくら場況がいいと言っても、残り2枚のドラ表示牌ですよ?