次の南1局でも、1枚切れの自風の、場風のなどを手の内に残す進行。
8巡目でを重ねると岡田から、を鳴いてテンパイを入れ、テンパイ料1500点を得た。
こうした字牌は、アガリに向かうなら大事な役になり、相手の先制攻撃を受けて守るときには、安全度の高い牌として使いやすくなっていることが多い。こうした小林の字牌の扱い方は、打ち手にとっては非常に参考になるだろう。
もちろん小林とて前に出るべきときはしっかりと勝負をするし、それで放銃することもあるわけだが、そうではない場面ではしっかりとリスク管理をし、放銃を避けつつ可能な限りテンパイを取る。そんな彼の持ち味が出た試合だった。
小林のチームメイトであるU-NEXT Pirates・朝倉康心の有名な言葉に「形テン(形式テンパイ)は勝負手」というものがある。テンパイ・ノーテンで動く点数は、満貫やハネ満といった大物手と比べれば小さなものだが、一方で麻雀、特にMリーグは、相手より100点でも上にいけば大きな順位点が入るルールとなっている。そこで勝敗を分けるのが、テンパイ料、本場と言った細かい加点になることも往々にしてあるものだ。そういえば小林の前回のトップ(10/28)も、本場を入れてたった200点かわしての、逆転トップだった。
さて、試合後の勝利者インタビューは、史上初めての同点トップということで、小林、岡田の両名が共にインタビューを受けることになった。しかしその表情は非常に対照的である。
そこで小林が自身の過去のミスに触れつつ、岡田をフォローしていたのが印象に残った。また、対局後の黒沢が笑顔を見せていたのは、岡田への気遣いによるものだろう。そして、Twitterではこの試合でラスとなった魚谷も、岡田を励ますツイートをしていた。
https://twitter.com/yuumi1102/status/1189905865555333121
試合が始まれば激しく戦うMリーガー同士も、試合が終われば麻雀界を盛り上げていく仲間。そんな連帯感が、各選手からは感じられた。
さて、Mリーグが開幕して1ヵ月。みなさんにとっては「まだ1ヵ月」だろうか、それとも「もう1ヵ月」だろうか。原則全試合を視聴している筆者としては「もう」という感覚である。なんだかあっという間だったが、振り返ればいろいろなことが思い出される・・・そんな、濃厚な時間であったように思う。きっとそれは、Mリーガーのみなさんにとっても同様だろう。
とはいえ、各チームはレギュラーシーズンだけで、あと70試合も戦うのである。どんなスポーツでもそうだが、リーグ戦では試合が続いていく中で、悲喜こもごも、さまざまなストーリーが生まれていく。そして、そのストーリーを踏まえて試合を見ていけば、また新しい楽しみ方もできるようになるだろう。
ただ、人の記憶というものは曖昧である。もし何か振り返っておきたいトピックスがあるならば、「キンマweb」の観戦記をご覧いただければ幸いです。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。