あれも欲しいこれも欲しい
でも働くのはイヤ
私が経営している雀荘は、長期間働いてくれる従業員がたくさんいて、とても助かっています。
学生時代にアルバイトに来て、卒業して大手企業の正社員になってからも、趣味と実益を兼ねて、週末は臨時で手伝ってくれたりとか。
「お、○○ちゃん、戻って来たの?」
馴染みのお客さんも喜んでくれます。こういう声がかかること自体、アルバイト中も良い仕事ぶりだった証拠ですよね。
一方、採用はしたものの、最初からダメそうな雰囲気で、採用取り消しになったり、すぐに辞めてしまう、あるいは解雇になるケースもも、ごく少数ですがあります。
働き始めたとたんに、サラ金からの借金返済の督促の電話が来るようになったこともありました。
「すみません、居ないと言ってください」
「居ないと言ってくれと、言ってますが」
すぐに追い込みが来て、逃げ出してしまいました。
「大手麻雀チェーンの店長をやってました」
とアピールする応募者もいました。
「すごいね。何店の店長」
「いや、どこっていうこともないんですが、あっちこっち」
採用は保留にして、そのチェーンの社長に確認の連絡を取ります。
「うちに居たことはありますが、店長はやらせてませんね」
逆もありますよ。
「今ウチで働いている○○が、親方の所を辞める時にトラぶったらしい、という話が最近入って来たんですが、どうなんでしょう?」
「安心してください、仕事や金銭面のトラブルは一切ありません。もしあったとすれば、私以外との人間関係じゃないですかね。仕事は誠実で優秀でしたよ」
「前の雀荘でも長年トップを任されていたので、卓回しや麻雀には自信があります」
採用してみたら、本人の言う通り、即戦力になりました。
「即戦力としては申し分無い。このまま伸びてくれれば凄い人材になるかも」
と期待したんですが、意に反してちっとも伸びません。
先輩や同僚の話によると
「仕事をしてるふりをするのが凄く上手い」
「親方の目を盗むのも上手い」
「でもある常連さんは、ありゃダメだって言ってました」
という評価でした。
ボスの店長や、私の目はごまかすことができても、同僚やお客さんはごまかせません。ズルをする人は、意外にここらへんは勘違いするようです。ボスの目はたったの2個ですからね。
これは本人にとっては少し不幸なことのように思います。
知識があるふりをする、仕事ができるふりをするのが上手だと、やがて誰も仕事を教えてくれなくなるからです。
本人が知りたいことがあっても、今さら聞けないということもあるでしょうしね。
こうした少数のバイト君が、勤務先そのものを信用できず、できるだけ短期間で良い条件を引き出したい気持ちは分かります。
ブラック企業問題など、雇用状況は依然として明るくありませんからね。
他の人の数倍貢献すれば
3割くらい給料が上がります
「20対80の法則」あるいは「パレートの法則」「ABC分析」というのをご存じの方も多いと思います。
例として良く挙げられるケースはこう。
「セールスマン10人の販売店がある。全社で月間100個販売してるので1人平均は10個。でも実際の内訳は、2人のセールスマンが80個売って、残り20個を8人で売っていることが多い。
少しオーバーに感じるかもしれませんが、少なくとも全員が平均に近いということは有りません。
ディーラーの場合は、成績が良い人には売上に応じて報酬を出し、成績が悪い人は解雇することもあるでしょう。
でも、多くの会社では、それぞれの貢献度がハッキリとしません。
雀荘などの接客業もそうです。
「お客さんを呼べるスタッフ」「お客さんを維持できるスタッフ」「お客さんを散らす(来なくさせる)スタッフ」がいたとしても、評価がしにくいんです。
お客さんを呼べるレベルならプロ中のプロですよね。維持できるレベルももちろんプロです。ごく少数ですが、ボスの目の届かないところで、お客さんを散らしているスタッフがいるかもしれません。でも、給料の差はセールスマンほど、ハッキリしていません。
ハッキリさせると、却って全体のチームワークや生産性が低下するリスクもあります。
接客業の評価システムで、有名なのは指名です。
もう少し手軽なゲームのような評価方法もあります。
「お気に入りの子には、このチップ券を渡してやってください」
さきほどの「20対80の法則」がいきなり出てきそうですね。
接客に一生懸命になるメリットの反面、仲間割れしたり、傷ついて辞めてしまうスタッフも出てきそうです。
現実は、人の何倍もチームに貢献して、せいぜい3割くらいのアップでしょう。
ただし、それは同じ仕事の場合です。そういう優秀なスタッフを会社は放っておきません。マネージャーや本部スタッフなどに起用されるので、やがて5割くらい昇給できるでしょう。さらにやりがいのある仕事にステップアップするのも夢ではありません。
コンビニのアルバイトから頭角を現わして店長になり、さらに本部スタッフに抜擢されて大出世なんてこともあります。
本部スタッフでは店長の経験を生かした、スーパーバイザーがイメージしやすいですよね。他にもバイヤー(買い付け)や、さらに専門性の高いマーチャンダイザー(商品政策担当者)や、店舗展開責任者、財務担当重役などがありますが、もはや店長の仕事とは別物です。店長時代とは別の人間と言えるほどの成長が必要だということです。
仕事ができるふりは、自分の成長を妨げるだけで何の役にも立ちません。