第26試合 因幡はねる vs 鴨神にゅう vs 多井隆晴 vs ルイス・キャミー
神域リーグ第9節
もう残り2節となったこの大会、開催日には必ず神域リーグ関係の言葉がtwitterでトレンド入りするほどの盛り上がりを見せている。
その熱狂ぶりは、開催1年目とはとても思えない。
何が視聴者を惹きつけるのか。
その一番の理由は、やはり有名配信者達が真剣勝負の中で、全力で麻雀を楽しんでいるのが直に伝わってくることではないだろうか。
プロの放送対局では見ることのできない、打っている最中の一喜一憂。
どんな想いで牌に相対し、麻雀を打っているのか。
それが言葉としてわかるこの神域リーグは、非常に熱が視聴者に伝わりやすい。
そして感情が表に出る分、どうしても視聴者は負けている人に感情移入しがちだ。
もちろん自分の推しているプレイヤーがいて、そのプレイヤーしか応援しないという人はその限りではないないのかもしれないが、ほとんどの人は応援しているチームがあったとしても、大きく負けている、不運に見舞われているプレイヤーに感情移入をしてしまうのではないだろうか。
これは第8節までを終えた段階での個人ポイントランキングである。
第26試合ではこの14位16位に名を連ねている因幡はねると多井隆晴が出場する。
そしてこの2人はどちらも連投。
多井に至っては大会ルール上3連投が確定している。
ここまで苦しい想いをしてきた2人の対決。
自然と注目が集まった。
更にこれは第26試合が始まる前のチームポイントランキングだ。
ヘラクレスはトップまであまりに遠く、アキレスもまたマイナスに苦しんでいる。
チーム2位につけているゼウスも楽観できる状況ではない。
アトラスとの差は実に250以上。最終節を迎える前に、できるだけ差は詰めなければ優勝の2文字は遠ざかるばかりだ。
チームを背負って。仲間を背負って。
東家 因幡はねる(ヘラクレス)
南家 鴨神にゅう(ゼウス)
西家 多井隆晴(アキレス)
北家 ルイス・キャミ―(アトラス)
この4人の選手が、鎬(しのぎ)を削ることになった。
東1局
多井の配牌を見てみよう。
役牌の発が対子だが、ドラも無ければ赤も無い。
ホンイツは全く見えないし、チャンタが少しだけ見えるくらいだろうか。
上家の鴨神の初打は。
これを鳴いた。
多井が普段このを鳴いているイメージは全く無い。
というか探してもこのようなシーンで多井が鳴いている記録はなかなか無いのではなかろうか。
多井にはもう後がない。
この日の第1試合にあたる第25試合で、多井はまさかのラス。
ここでトップをとって、更に第27試合でトップをとってもまだチームは苦しい状況。
是が非でも、この試合はトップが欲しい。
だからこそ、このは鳴きなのだ。
多少無茶でもいい。
この手を鳴かずに構えたところで、先制できる可能性は限りなく低い。
それを多井は人よりも深く理解している。
流石と言うべきか。
多井は発を鳴いてから6巡でテンパイにこぎつけた。
打点は1000点と安いが、このアガリが多井の、アキレスの反撃開始の狼煙。