打牌の速さと判断の早さ
内川幸太郎が戦った
スピードの世界
文・東川亮【金曜担当ライター】2023年11月10日
大和証券Mリーグ、11月10日の第1試合。
組み合わせを見たとき、結果はともかくとして率直に思ったことが一つあった。
「速そうだな、この試合」
寿人・松本、そして今シーズンより加わった猿川は、Mリーガー36名のなかでも打牌スピードの速さで上位に入る打ち手だ。内川も、決して打つのが遅いタイプではない。つまり、単純に試合のテンポが速くなりそうだと思ったのだ。
実際、この試合はいろいろな意味でスピーディーだった。今回は、「速度」に注目して試合を振り返ってみたい。
第1回戦
東家:内川幸太郎(KADOKAWAサクラナイツ)
南家:松本吉弘(渋谷ABEMAS)
西家:佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘俱楽部)
北家:猿川真寿(BEAST Japanext)
東1局、全員が第1打を終える前に、親の内川がダブをポンした。
その後すぐにをチー、一気に手を進める。
猿川はトイツのを2枚とも見送って安全な進行。
寿人も内川の現物であるトイツのを切って、早くも守備的に構えた。
理由はいくつかある。まずは、二人ともまだまだ手は遠く、2フーロの内川に対して明らかに速度で遅れを取っていること。ドラも赤もなく、押し返すにはメリットが乏しい。
そしてもう一つ、を切った松本の存在。は場風でもあるため、松本にとっても使い道がない牌ではない。それを早々に切ったということは、
松本にもすでにかなりの手が入っているという予測が立つ。実際、第1ツモでを引き入れてメンツが完成。ダブドラのもあり、かなりまとまりそう。
このチャンス手を仕上げるために、松本は1巡目という最も鳴かれにくいタイミングでダブを切ったのだった。実際にはいきなり鳴かれてしまったが、それでブレーキがかかるわけでもない。
そんな松本の様子を見て、2人は引いたのだった。
最初にテンパイしたのは松本。しかも、とんでもなく高い。ドラを赤含みで暗刻にして、リーチドラ3赤赤のハネ満は確定、ツモれば三暗刻もついて倍満スタート。
内川もテンパイ。ピンズから、を切ってカン待ちに受ければダブドラ赤の満貫テンパイになるが、ここはを切ってのカン待ちに受けた。はどちらも宣言牌の無スジだが、通した後のアガリやすさを見たか。
直後、松本の手には4枚目の。当然の暗槓、 #槓全メシ完全メシ祭 発生だ。内川はカン待ちに受けていたら絶望だったが、アガリの道筋は残っている。
新ドラも1枚乗り、内川の手は満貫に。そこへやってきたのが松本のロン牌だった。自身の手に価値があると思えば押す手もあるが、松本の手は内川目線だけでも既にリーチドラ4赤のハネ満が確定している。
さすがにここは考える。押すべきか、引くべきか。
内川はオリを選択した。場にはピンズの上目がほとんど切られておらず、カン待ちで勝負するには苦しいという判断。内川は自身の手や親番に甘えなかった。
直後、松本の手でが踊った。
リーチツモ三暗刻ドラ4赤赤、10翻に・・・
裏ドラが2枚。計12翻、強烈な三倍満で、局面は早くも大きく動いた。
大きく抜け出した松本を追う2番手として、名乗りを挙げたのは内川。東4局3本場、リーチ一発ピンフドラの満貫を寿人から出アガリ。本場と供託でプラス3900、ハネ満クラスの収入になったのは大きい。
寿人も、テンパイにつき真っすぐ打ち抜いた結果だった。リーチに対して通っていない牌をさも平常時かのように押す姿は、打牌のテンポを含め、放銃したとはいえ見習いたいところだ。
ここから内川のエンジンに火がついた。
次局は寿人のドラ暗刻リーチに対して押しきり、1000は1100オール。
迎えた南1局2本場、ここでの内川の対応が面白い。松本のリーチに対し、をチーして一発を消しつつ前に出ると、を引き入れてテンパイ。待ちを選べるところで、松本の現物を切ってノベタン待ち、だけ234三色でアガれる片アガリの形に受けた。を切ればタンヤオが確定する待ちだが、が目に見えてなく、がドラということで、安全度を重視。